群雄割拠の章
第1話 「貴女はどなたです?」
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であった。
同じように妖術のような技を使い、同じように剣も槍も効かない服を着て、同じように戦場で陣頭に立つのである。
盾二を詳しく知らない諸侯はもちろん、遠い地にいる曹操には欠片も信じなかった。
そう……『盾二を詳しく知る者』を除いては。
―― 劉表 side 漢中 ――
「……では、真なのだな?」
「…………………………はい」
漢中の王座の間。
その席で、儂は対面にいる小さな宰相に尋ねた。
その小さな宰相――孔明は、目を伏せながら儂の問いかけを肯定した。
「………………っ」
思わず歯噛みしてしまう。
儂は、儂は……
「……この盾二からの書簡、最初に見た時は思わず目を疑ったわい。まさか、そんなことになっておったとは……」
「……………………」
つい先日、漢中からの商隊が届けてくれた盾二からの書簡。
それを読んだ儂は、すぐに漢中へ馬を走らせた。
護衛の兵もつけずに駆け出してしまったことは、漢中についてから気がついた。
こんな不用心なことなど、漢中に来るのでもなければできまいて。
漢中の街道は、大陸一安全な街道であるのだから。
「……この書簡には、儂の養子になることの正式な断りと、自身が野に下ること、そして大陸を去ることが書いてある。で、だ……孔明殿。もう一度確認させてくれい……これは、これは真に盾二からの、正式な書簡なの……じゃな?」
「…………………………はい」
繰り返す儂の言葉に、目の前にいる小さな宰相は、目を伏せ、顔を俯きながら、再び儂の問いかけを肯定した。
……そう、か。
「……これには、理由が書いておらん。その理由を、聞くことはできぬのかの……?」
「…………………………」
「……大陸に、変な噂が立っておる。盾二がすでに漢中を、玄徳の嬢ちゃんの元から去ったと……それは、真なの、だな?」
「…………………………はい」
「何故じゃ!?」
儂はたまらず目の前の台を叩く。
その音に、孔明の嬢ちゃんはびくっ、と身を震わせた。
「何故、あの盾二が! あれほど才気溢れ! あれほど儂が誘っても、玄徳の嬢ちゃんの元を動こうとしなかった盾二が! 何故、その嬢ちゃんの元を離れて、野に下る! 盾二が何かしたというのか!? あれほどの男を手放す理由が、この梁州にあるというのか!?」
「…………………………」
「玄徳の嬢ちゃんは、盾二を放逐したというのか!? あれほどの男を、一体どんな理由で! 何故盾二が――」
「…………………………っ」
儂の激昂に、ただ唇を噛み、肩を震わせる孔明の嬢ちゃん。
その唇から血が滴るのを見て、儂は言葉を止めた。
「……その理由は、
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