第4部
江戸日常編その2
第62話 テンションが上がるとその人の本性が見えたりする
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る中、土方は両手にグラスと酒ビンを持って席につく。其処には宴会を楽しんで微笑を浮かべているシグナムの姿があった。
「今回のお前の働きには感謝している。お陰で隊士の被害は最小限に済んだ」
「そうか、私としても実戦で実力を試せて良かった」
互いに今回の事件の苦労を労う。土方がシグナムの前に一つグラスを置き、酒を注ぐ。その後で自分の元に置いておいたグラスにも同じように酒を注いでいく。
「明日からまた江戸を守る為に働く事になるが、今日だけはその事は忘れて楽しめ」
「あぁ、頂こう」
グラスを持ち、同時に酒を体の中へと流し込んで行く。ほろ苦さの中に大人にしか分からない味が二人の舌の上に広がっていく。その感触を二人は楽しんでいた。
「美味いな。酒なんぞ余り飲んだ記憶はないが、これが酒と言う物なのだな」
「ただの酒じゃねぇよ。苦労をした後に飲むから美味いんだ。これからもこの味を味わいたかったら戦って生き残ることだ。この意味が分かるか?」
「愚問だな。主を残して死ぬ訳にはいかん。私が果てる時は主の盾となり剣となる時だ」
シグナムの放った言葉には彼女の強い意志と覚悟が伝わってきた。その言葉と熱意に土方は満足したのか笑いながらまた酒を飲んでいく。
シグナムもまたグラスに残っていた酒を一気に飲み干す。
「おいおい、美味いのは分かるがあんまり飲みすぎるなよ。明日二日酔いになっても知らんぞ」
「……足りん」
聞き間違いだったか。トーンの低いシグナムの言葉が響いた。その言葉に土方が驚愕しだす。
「へ?」
「聞こえなかったのか、足りんと言ったのが聞こえなかったのかぁ!」
怒号と共に土方の顔面に鉄拳が叩き込まれる。土方の顔が梅干し状になってしまったのに一切気にせず、土方の手から酒ビンを奪い取り、ラッパ飲みの如く一気に飲み干してしまった。
「お〜いおいぃ、まだ潰れるにゃ早いんじゃないのかぃぃ兄ちゃんよぉ」
「あ、あのぉ……シグナムさん? 何かいつもと違いませんかぁ? 何時もと雰囲気とか言葉使いとか……違いませんかぁ?」
「なぁにごちゃごちゃ抜かしてんだゴラァ! 男だったらもっとどっしりと構えて樽ごと飲むもんだろうがゴラァ!」
そう言いながら土方の頭を脇で挟み、テーブルの上にあった酒をひたすら土方に注ぎ込んでいく。
「ひ、ひぐにゃむひゃぁん、こここ、これ以上は飲めにゃいんでしゅけどぉぉぉ!」
「ガタガタ抜かしてんじゃねぇよ。まだ宴は始まったばっかだろうが。宴の途中でぶっ倒れたら士道不覚悟で切腹にするぞぉゴラァ!」
「い、いや……そんな局中法度はない―――」
「私が今作った。文句あるかぁ?」
「あ、ありましぇん」
すっかり気合負けしてしまった土方十四郎その人であった。どうや
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