アカデミー編
夕焼け
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人影を見る。
女の人が男の人と手をつないで歩いている、仲睦まじいと言えるその姿。カトナはその姿を憧れが満ちた目で見て、横にいたサスケの手をぎゅっと握る。
「…?」
「まね、いい?」
「…別にいいけどよ」
女の人の黒髪は、夕焼けを浴びて赤く染まっている。
赤い髪の毛。自分と同じ髪の毛に、少しだけ頬を赤く染めたカトナは、サスケの手を握りしめながら、小さく言葉を漏らす。
「お母さん、みたい」
その言葉を理解したと同時に、サスケは一瞬にして顔を赤く染めた。
夕焼けの色にかき消されて、カトナは全く気が付かなかったが、サスケは握られていない手の方で、顔を隠す。
見下ろした先の女の人のまねをして行った行為が、カトナが予想している、母親らしい姿を連想しているのがわかったけれど。それでも、カトナは自分が母親のようだと言ったのだ。それならば、手を繋いでいる男役の自分は父親であって。
恋している少女に言われて、喜んでしまったサスケは、決して悪くないだろう。
「…確かに、母親みたいだな」
「…でしょ。うれしい、な」
その言葉に違和感を覚えたサスケは、カトナの方をゆっくりとみる。
カトナは自分が女であることを嫌っている。
それはつまり、母親になることを拒んでいることだとサスケは判断し、今まで母親の話題は避けるようにしていたのだが、どうやら、そうではなかったらしい。
真っ赤に染められた頬は、決して夕焼けの色だけで染められていなかった。
女であるということを指摘されれば発動されるのに、母親に似ているというのは嬉しくなるのか。
そうかと思って、そこはまだ残っているのかと少し懐かしみ。
そして、いつものように覚悟を決めた。
サスケはカトナの頬に手をそえる。
「…母親になりたいのか?」
カトナの瞳が丸くなる。
彼女は困惑するように眉を寄せ、サスケを見つめた。
「…母親に、なる……?」
サスケの問いを繰り返した彼女はうつむく。
赤い髪の毛が風でひらめいた。
カトナは少しだけ恥ずかしそうに笑う。
「なり、た……」
最後まで、言葉が出されることはなかった。
ふいにカトナは眉を顰める。
彼女はこめかみのあたりを押さえ、痛みに呻きだす。
サスケがやっぱりなと呟いて、彼女の前髪をかきあげる。
「さ、……す…?」
その声に返事をせず、彼女の額を、兄がしてくれたのをまねするように小突く。
とんと音が鳴った。
カトナの目が一度瞬く。
赤い瞳に一筋の黒い線が走った。
「サスケ?」
「なんでもない」
首を振るサスケにカトナは不思議そうに首を傾げ。
そして、あれと戸惑いを見せる。
何を先程まで話していたのか
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