砂浜の文字
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戸惑いながらも頷いた。それを聞いて心がリラックスした。これで言えると思った。
「じゃあ言うよ」
「ええ」
幸一は二度目であるが意を決した。そして遂に言った。
「大学に行ったらね」
「うん」
「付き合ってくれないかな」
「いいわよ」
「やっぱりね。そんな・・・・・・え!?」
幸一は今紗代が言った言葉を聞いて目を点にさせた。
「今何て」
「いいわよって言ったのだけれど」
紗代は落ち着いた態度でこう返した。
「今彼氏いないし。いいわよ」
「本当にいいの?」
「ええ、別に」
何もわかってはいなかったが拒むこともなかった。紗代はすんなりと頷いた。
「何か。嫌なの?私がいいって言うと」
「いや、そうじゃないけれどね」
幸一はそれを慌てて否定した。
「ただ。何かね。それいいのかなあって」
「彼氏がいたら断ってたわよ」
紗代はあっけらかんとしたものであった。
「けど今はいないから。宜しくね」
「う、うん。それじゃあ」
「ええ」
こうして幸一の告白は成功した。だが紗代の鈍さとあっけらかんとした態度に結局振り回された形となった。それは付き合ってからも変わることがなかった。
けれど幸一はそれでもいいと思った。そうしたところも含めて紗代が好きになったのだから。
恋は惚れた者が負け、幸一は負けた。だがそれでも恋をしないよりはよい。それで幸せになれるのだから。少なくとも彼は幸せになれた。紗代のおかげで。砂浜に文字を書いた甲斐はあったのであった。
砂浜の文字 完
2005・11・8
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