砂浜の文字
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まった。本当に子供じみていた。
「すぐにわかることだし」
「すぐにか」
「ええ、秋にはね」
紗代は言った。
「わかるわよね」
「まあね」
幸一はそれに頷いた。
「合格すればだけれど」
「合格するわよ」
紗代はそれに対して励ますようにして言う。
「安心してよ」
「何でそう言えるの?」
「勘よ」
根拠はないと言っているのと同じだったが幸一はそれに妙に納得できた。
「勘か」
「そうよ。私の勘は当たるのよ」
「だったら秋にまたここで会わない?」
「ここで?」
「うん。合格したらここでそれを伝えるよ」
「面白そうね」
「だろう。俺がここの砂浜に合格したって書いておくからさ」
「砂浜に」
「その大学の合格発表の翌日に。それならいいだろ」
「ええ、私はそれでいいわ」
紗代には別に断る理由もなかった。それで納得した。
「じゃあ秋にまたここでね」
「ええ」
「忘れないで来てくれよ」
「忘れないわ。きっとね」
「それじゃあ」
「うん」
実は紗代が勘がいいというのは大きな間違いである。そう思っているのは彼女だけで実はかなり鈍い。この時もあることに気付いてはいなかった。幸一の目が日ごとに変わっているということに。そうした意味で彼女の勘は呆れる程鈍いものであった。
そして夏が終わり秋となった。紗代は大学にエスカレーターで入学することとなりそのまま幸一の受験する大学の入試と合格発表を待った。そして発表の日となった。
「明日かあ」
カレンダーを見ながらこう思った。その日は学校だったが大学が決まっているということもありもう消化試合のようなものとなっていた。後は残ったテストで赤点をとらなければいいだけなので気が楽であった。
そしてその日紗代は学校に行くふりをして家を出ると駅で着替えてそのまま幸一のいる場所へと向かった。電車で数時間かかったがそれでも着いた。
そしてその足で夏に二人で歩いた砂浜に向かった。そしてそこを見回った。
「どうなったかな」
探しているうちに不安になってきた。若し不合格なら何も書かれてはいない。それは何か嫌だった。だがどうして嫌なのか彼女はこの時はわからなかった。ただ何となく嫌だったのだ。
下を見ながら歩いているとやがて文字が見えてきた。そこにはこう書かれていた。
『やったぞ 幸一』
「あいつ」
紗代はそれを見て微笑んだ。どうやら合格したらしい。
だが文字はそれで終わりではなかった。まだ続いていた。
「ん!?」
気がついて文字を見続ける。そこには続いてこう書かれていた。
『あの海水浴場に来てくれ』
「あの海水浴場」
それを見て暫し考えた。だがそれが
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