砂浜の文字
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だな。俺も高三なんだ」
「何かそうは見えないわね」
見れば幼い顔立ちをしていた。背は高いが童顔であった。実は自分より年下かな、とも思っていたのだ。
「よく言われるよ」
幸一は苦笑いしてこう言った。
「背は高いのになあ。それで困ってるんだよ」
「案外中身もそうだったりして」
「あっ、初対面でそんなこと言うんだ」
それを聞いて口を尖らせてきた。
「酷いなあ。何でそんなことを」
「だって本当のことだから」
紗代は笑ってそう返した。
「何か。弟みたい」
実は紗代には弟はいない。それでもそんな感じがしたのである。
「じゃあ弟に場所教えられたんだね」
「そうなるわね」
「頼りない姉ちゃんだな。そんなのでいいのかよ」
「いいのよ。姉さんだからね」
居直るのもいいというわけだ。姉というのは便利な立場であった。
「それじゃあ泳ぎましょうよ」
「何か引っ掛かるけど。まあいいか」
幸一は釈然としなかったがそれに頷いた。そして紗代と二人で海に入り一緒に泳いだ。それが二人の出会いであった。
それから夏の間二人は遊んだ。紗代は受験のことは気にしていなかった。推薦でもうおおかた決まっていたからであった。昔ならもっと勉強しなければならなかっただろうが楽になった受験に感謝していた。
話せば幸一も大体決まっているらしい。何でも結構遠くの大学に通うらしい。
「何処なの?」
夕暮れの海岸を二人並んで歩きながら尋ねた。二人はラフな私服に身を包んでいた。
「それはちょっと」
だが幸一はどういうわけか口篭ってしまった。何か言いにくそうであった。
「何か・・・・・・恥ずかしいなあ」
「恥ずかしいの?」
「ちょっとね」
そう言って照れ臭そうに俯く。
「何か。言いにくいや」
「じゃあ教えてくれないの?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
「じゃあ教えてよ」
絶妙な誘導であった。
「秘密にしておくから」
「それなら」
それでやっと言う気になった。幸一はそっと紗代に囁いた。紗代はそれを聞いて言った。
「何だ、私の通う大学の近所じゃない」
「そうだったの」
「私の高校殆どエスカレーターでね」
だから高三の夏に勉強しなくてよかったのだ。結構な身分ではある。
「それでそこになったのよ」
「いいなあ、それ」
幸一はそれを聞いて羨ましそうに言った。
「俺なんかこれでも受験勉強に必死なんだぜ」
「遊んでばかりに見えるけど」
「家じゃ勉強ばっかりなんだよ」
言い訳にしか聞こえないがこう言った。
「本当だぜ。じゃあ証拠見せようか」
「いいわよ、そんなの」
それを聞いて思わず苦笑してし
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