第二十八話 主将の背中
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を鈍らせた。
「回れ回れーっ!」
「嘘だろ……」
真正面の打球だったが、三塁ファールゾーンに大きく弾いてしまった。二塁ランナーがサードを蹴って帰ってくる。打った織田は一塁ベース上で飛び上がってガッツポーズした。
「よっしゃーっ!!ついに一本出たぜー!都築ィー!この一点守って完封だぁー!」
織田の言葉に、ベンチの都築もガッツポーズで応える。譲二はサードのポジションに立ち尽くし、紅緒は何も言わずにマウンドを蹴った。
(まさか、今年も4回戦で……?)
ベンチで見ている権城も顔を青ざめさせる。
打たれたヒットはたったの一本。それもエラーかどうか怪しい強襲安打だが、8回裏に来て先制を許してしまった。
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「権城くん、バット振って準備しといて」
8回裏の守備から帰ってくるやいなや、紗理奈が権城に声をかけた。権城は既にヘルメットをかぶり、打撃用手袋をはめて防具もつけていた。
「もう準備はできてますよ。で、どこの打順っすか?」
「私の後ろ。頼んだよ。」
短く言って、紗理奈は自分もネクストに行こうとする。9回の打順は4番の紅緒からである。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
しかし、代打を出される譲二が紗理奈に食い下がった。
「この回どうせ紅緒は敬遠だ!同点のランナーが出る!チャンスが来るんだ!もう一度俺に任せてくれ!このまま終われるか!」
「あんたなぁ、いい加減にしろよ!今日ここまで一球たりともタイミング合ってねぇだろーが!」
懇願する譲二を権城が一喝するが、譲二は引き下がらない。紗理奈は譲二をジッと見た。
「確かに、品田さんはこの回も敬遠で同点のランナーは出るけど……もしかしたら私がゲッツー打つかもしれないよ?それとも私、バントした方が良いかな?」
「ウッ……」
言葉に詰まった譲二を見て、紗理奈は笑顔を見せた。
「……分かった。本田くん、そのまま次も行こう。権城くんは、坊くんのところで。」
「えぇー!?」
譲二の意向を聞いた紗理奈に、権城は目を剥いて声を上げた。譲二は「よっしゃー!」と喜び勇んで打席の準備を始める。
「……ケッ」
代打を出される事が決まった月彦は、ベンチにどっかと座って、白けた顔をしていた。抗議などはしなかった。譲二ほど、月彦は諦めが悪くなかった。
「ボールフォア!」
ちょうどその時、紅緒が敬遠された。
同点のランナーが出て、紗理奈がベンチから急いで打席に向かった。
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(何考えてんだよ、キャプテン。そんな希望聞いてたらキリがねぇだろうがよ。おまけに譲二の意地だなんだって、そんなもん信用できたもんじゃねぇよ)
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