第二十六話 夏のはじまり
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そうです良いんです〜」
権城は遠くのジャガー達から、近くの紗理奈に目を移した。紗理奈もまた、今日は結構派手な水着である。
背もスラッと高く、均整のとれたお手本のような体をしている。さすがは、南十字学園野球部の美人すぎるキャプテンだ。演劇部の人気ナンバーワンだ。
「…………」
権城はある事に気づいた。
紗理奈の腹は腹筋がついている。力も入れていないのに、六つの割れ目がうっすら見える。
太ももの裏のハムストリングスが、くっきり見えるまでに鍛え上げられており、尻にはエクボがあった。女としてはビックリするほど脂肪が少ない、筋肉質な体をしていた。
「どうしたの?ジロジロ見て。いやらしいなぁ。」
紗理奈は自分から目を離そうとしない権城に、訝しげな顔をした。しかし、胸元も足も隠そうとせず、堂々と立っている辺りに、この少女の自信が透けて見える。
「……もしかして紗理奈キャプテン、実は凄く頑張ってる人ですか?」
「何を言うんだ、いきなり」
紗理奈はため息をついて、権城のそばに腰掛けた。頬に手をついて、水平線の向こうを見つめる。
「後少しで、君からもキャプテンとも呼ばれなくなるんだなぁ。」
「そうですね。“部長”になりますね。」
野球部の最後の夏は一ヶ月後だが、演劇部のラスト公演は二学期初めの文化祭である。紗理奈は一足早く、野球部の方を引退する事になる。
「……私ね、高校を卒業したら、都内の芸術系の大学に行くんだ。劇作家か、もしくはナレーターになりたいと思って。」
「島には残らないんっすね」
「うん。……元々、高校の三年間だけ、この島で過ごすつもりだったから。大学は家から通える所にするつもり。」
「……なんでわざわざ、こんな島に……」
「青い空と海、照りつける日差し、真っ白な砂浜……青春したかったからかな」
「拓人みたいな事言わないで下さいよ」
権城は笑ったが、紗理奈の水平線を見る表情はシリアスそのもの。遠い目をしていた。
「野球もできて、演劇もできて、両方で好き勝手仕切らせてもらったし、私、もう悔いないよ。」
「……それ、今こんなビーチで言っちゃうような台詞っすか?タイミング間違えてますよ、脚本家なのに。」
ブレずに突っ込み続ける権城に、今度こそ紗理奈は高笑いした。
「あはははっ!それもそうだなぁ。もっと、しかるべきタイミングはあるな。」
「そうですよ。野球も演劇も、後少ししか残ってないって思うかもしれませんけど、その後少しこそが一番大事なんっすから。終わった気になられたら困りますよ。」
それは権城の本心だった。
島中の注目を集める文化祭の公演にしたって、夏の大会にしたって、どちらも最高の舞台。終わったつもりで臨んで、そのまま終わらせるには惜しい。そして紗理奈に
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