第三章
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バキア人だったわ」
チェコとスロバキアは二次大戦の終結までは分裂していた。しかもチェコはナチスドイツに併合されていたこともある。複雑な歴史を歩んでいる国でもあるのだ。
「その国で生きていたけれど」
「それで一つになってプラハに行かれたんですか」
「そうよ。仕事を求めてね」
それはよくある話だった。仕事を求めて街に出るのは。それは何もこの国だけのことではない。どの国でもある話なのである。何時の時代でもだ。
「プラハに出てそこで結婚して家庭を持って」
「そうだったんですか」
「それからずっとだったわ」
話す老婆の目は遠いものを見ていた。
「ずっとプラハにいたわ。何十年も」
「長かったのですね」
「けれど子供達は独立して主人も亡くなって」
語る目に悲しさも宿った。愛する者が旅立ち亡くなったことに対する目である。
「それで私だけになって」
「スロバキアにですね」
「やっぱり私はスロバキア人だから」
このことをまた話すのだった。
「スロバキアに戻るわ。そしてそこであと少しだけいるの」
「そうですか」
「この窓から見る限り変わっていないし」
実際に東ドイツでは昔ながらのドイツが残っていると言われた。こえは共産主義の経済発展の遅れのせいである。その為に昔ながらのものが強く残ったのである。
「懐かしい祖国でね。静かに余生を過ごすわ」
「それが楽しみなのですね」
「そうよ。貴女はどうかしら」
老婆は今度はエディタに顔を向けて問うてきた。
「貴女もスロバキア人よね。どうするの?」
「私ですか」
「祖国に戻る為に来ているの?」
今度はさらに具体的に問うてきた。
「それだったらこのまま」
「私は」
俯き戸惑っていた。しかしその中でそれでも言うのだった。
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