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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第九二幕 「ドリーミー」
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男女の会話だった。女が一方的にしゃべり、男は時々しか返答を返さない、どこか不気味さを感じる異質な会話。例によって、具合的に話していた内容はほとんど覚えていない。
今回、今までに見た簪の夢と決定的に違うところがあるとすれば、それは「こんな夢を見た」という記憶を何故か嫌によく覚えていることだ。理由は何だろうか。誰か、夢の登場人物以外の誰かの気配を感じた気もしたが、よくは覚えていない。ともかく頭に何かが突き刺さっているような違和感が気になって、寝る気になれなかった。

「ただの変な夢に、何で悩まされなきゃいけないの・・・」
「・・・何か悩みがあるの?」

背後から突如、予想だにしない声。びくん、と肩が跳ねた。その声の主を必死で思い出した簪は慌てて振り向いた。

「・・・・・・ッ!?・・・ぁぅっ・・・ゆ、ユウ・・・?」

あまりにも驚きすぎて手に持っていたペットボトルの中身を取り零しかけた簪の慌てぶりに、ユウは「驚かせるつもりはなかったんだけど・・・」と苦笑いしながら隣に座った。驚きすぎて心拍が意味もなく加速する。

驚きの次に訪れるのは、独り言を聞かれてしまったという羞恥と何故ここにユウがいるのかという疑問。ちらりと横目で見ると、ユウの髪はわずかに湿っており、顔が上気していることから先ほどまで温泉につかっていたのだろうことが伺える。

「ぇと・・・こんな時間に、温泉?・・・もう外出時間過ぎてるよ?」
「それは簪も一緒でしょ?」
「それは、そうだけど・・・」
「ま、僕の場合は兄さんとの組手のせいで体が汚れちゃったんだけどね」
「・・・納得」

成程、あの(ジョウ)の仕業ならば何があっても大体納得できる。またユウを困らせていたのだろう。もう次からは「兄さん」の一言ですべて察せそうな気がしてくる。しかもあれは一応教務補助生だ。やろうと思えば一部の違反を握りつぶすことも出来るだろう・・・などとジョウに対して失礼全開な事を考える。

そしてふと、そういえば2人きりになっている状況に気付いた。考えてみれば鈴と友達になる前は、2人きりというシチュエーションもよくあることだった。共通の悩みで意気投合したあの日がずいぶん昔に思える。
あの頃、簪の世界には楯無しかいなかった。目指すのも対抗心を燃やすのも、考えているのはあの人の事ばかり。そんな自分の思いを理解してくれる人などいはしないのだと妄信的に思い込んでしまっていた。心配してくれる人はいても、日本の代表候補性という立場と更識家という生い立ちのせいで周囲と少し浮いていたのだ。

そんな世界にユウが入ってきて、鈴が入ってきて・・・今では見えていなかったたくさんの人が見えている。皆個性が強くて、変で、たまにちょっとイラついたり戸惑うこともあるけど、皆いい人だ。

そうだ、夢が何だ。
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