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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第九二幕 「ドリーミー」
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い。そもそもこちとらか弱い恋する乙女なのだ。
こんなむさい夢なんぞ見たくもないというのに、まるであたしの話なんかどうでもいいというかのように幻影の声は続く。


―――吾が使命は羅喉神とその僕たる百邪を退け、人界を守護することに在らん―――

『・・・ッ』

その声が、音とも振動とも知れない不思議な波動となって、軽度の痛みを伴いながら頭の奥に響く。人間でいえば語彙を強めているように感じられ、今までの威勢が引っ込んだ。この声から感じられる意志は一体なんだろう。・・・・・・焦り?

―――然れど我が力(こころざし)半ばで叶うことなく、機人の躰は長き闘争の果てに失われん。輪廻をくぐりし再生の閉じられし()の中で、ただ無念と無為の真下(さなか)にあり―――

言葉の一つ一つが体を穿つように突き抜ける。心臓が穿たれたように胸がじわじわ疼く。アタシはこの声に従わなければいけないような。何か大切なことを思い出しそうな。そんな予感が―――あれ?


アタシの、アタシの目の前に何かが横たわっている。これは―――椅子?いや、座席。
電車や列車にある座席?それに切符、炎、そしてそれをなぎ倒すように横たわった岩と土砂。
そして真っ赤に染まった―――手だ。人の手。
小刻みに震えるその手は細く、まるで女の子の―――あれ?

腕が、あたしの体の方向から伸びてきている。
違う、あたしの手の筈がない。だってあたしの手は赤くなんかない筈。
じゃあ誰の―――まさぐるように動いた手が冷たい何かに触れた。
―――冷たいって、あたしの体じゃないのになんで感覚が分かるの?

これは、何。アンタが見せてるの?何のために?


―――吾が力の一端を取り戻す器を、汝は得たり。吾が力を使役せしめるは汝のみなり。故に汝が望まぬ限り吾は使命を果たすこと能わず―――

もう、言葉が耳に入らなかった。
気が付けば足元に真っ赤な水溜まりが出来ており、そこには自分が映っていた。
ちゃんと服を着ている。髪はツインテールではなく降ろしていて、もう片方の手は明後日の方向へと折れ曲がり、そして―――


―――契約の刻限来たれり。覚悟ありや?―――


肋骨と肋骨の隙間を縫うように、胸部の中心に近い部分を、鉄のパイプのような棒が貫いていた。直後、鉄臭くて熱い液体が、ごぼりと音を立てて口から溢れ出た。視界が急速に奪われていく。ママ、と呟きながら手を伸ばしたアタシの手は、見覚えのある――そう、昔にパパから預かったペンダントを握りしめ―――



 = = =




「ああッ・・・!?」

跳ね起きる。咄嗟にタオルケットをめくりあげて自分の胸部を触って確かめ、いつも通りの幼児体型であることにほっと一息をついた。自分の胸がいつも通り
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