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不可能男の兄
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――その日の朝はいつもと同じだった。



布団の中、異常な柔らかさと温もりを感じる。
全裸の、女がいた。
……葵・喜美。妹だった。
年齢的にまずいと思いつつも諦めている部分がある。
静かに布団から抜けだして、早朝の日課となっているランニングの為に着替える。
妹については、高価な抱きまくらだと思えば良い。
こうやって、たまに兄である俺のところ、弟のトーリのところと全裸侵入してくる。
今回の理由は、知らん。どうせ、怖い話でも聞いたんだろう。



妹と弟を起こさないように静かに部屋から家の外へと移動する。
体をほぐして薄暗い中、武蔵を走り始める。
走り始めてすぐに視線の先、三十メートル離れた所に金髪の色々と貧しい人物がいた。
それも、足元に犬を十匹位引き連れていた。
その光景を見れば、犬に追われているように見える。
しかし、走る脚は確かに地面を捉えており速度は俊足と言って良い。
……小さいからすばしっこい。
体ネタは、女性に対して失礼にあたるので思うだけにした。

「あ、おはようございます。ユーキさん、いつも早いですねー」
「おはよう。アデーレ。今日も元気だね」

犬は俺の定位置だと理解しているのか、アデーレの横に並ぶ際にわざわざ道を開けてくれた。
アデーレに並走して走る。

「ユーキさんと一緒に走るのも長いですよねえ。三年目くらいでしたっけ?」
「そうだね。確かそのくらいだったような。小等部はかけっこで、中等部は逃げ足で鍛えてたからね。いつも走ってる気がする」
「あー、巻き込まれ系ですもんねー。自分もそうですけど。クラスの中じゃユーキさんて結構常識人ですからね」
「身内がいつも迷惑かけてすまんね」

俺自身にも被害があるからなあ。
主に、兄だろ? 何とかしろよ、という感じで責任を押し付けてくるのだ。

「いえいえ、謝らないでくださいよ。昔からの事ですからみんなも諦めてるんでしょうね」
「それはそれで、ダメな気がする。鈴やアデーレだってまともな方だよな。正純は、新人だからな。それでも、一年で大分武蔵の芸風に慣れて来た気がするが……」
「そうですね。副会長も苦労重ね過ぎて色々とぶん投げてるんでしょうねえ。責任とか」
「そりゃ困るな。でも、正純に限っては何だかんだ言っても最終的には何とかするからな。正純と言えば、最近トーリが正純の尻を眺めてる時があるんだけど、ついにそっちの方に目覚めたのか?」

正純の歩き方からして、女の気がするが胸がないし、女性であった場合かなり失礼な事を聞くことになるからな。



「私に聞かないでくださいよー」
「悪い悪い。どうも、アデーレは話がしやすいから余計なことも話してしまうみたいだ。ほら、小動物的で懐いてる感じで可愛いし」
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