のつぶやき |
2014年 12月 19日 (金) 19時 52分 ▼タイトル 暇潰14 ▼本文 スピードワゴンの小沢かスリムクラブのフランチェンの方、若しくは矢尾一樹さんみたいな声しか出なくなってきたので病院行って薬貰いました。今では裏声があとちょっとで出そうな程度にまで回復しました。 最近こんなのばかり書いて小説投稿してない。 ※ ※ ※ 基本的に彼の事務所のメンバーは個人で仕事を拾うことが多い。 ティアは容姿の美しさから、衛はその家柄と実績から。今は遠出している残りの二人もそれぞれ単独で仕事を拾うことが多い。 そして彼らが事務所を空けている間、ずっと留守しながら算盤を弾いてはため息を漏らすのが法師の仕事だった。 しかし、大きな仕事や厄介な仕事になると、彼らも単独での解決は難しいと判断して事務所に持って帰る。その際に司令塔として働くことになるのが法師だ。 同時存在(バイロケーション)による素早い情報収集と状況判断は指示を飛ばす側にもってこいであり、何より信用と信頼がある。 というか、癖のある事務所メンバーの手綱を引いてちゃんと指示を飛ばせる人間自体が稀有である。 (事務所の方の追手は既に衛が足止めしてる。出来れば倒してほしい所だな) 状況は現在も進行中。 仕える手駒が少ないが、乗りきれないほど難所じゃない。 衛に後ろは任せたとして、問題は正面にある。 (ティアが移動中……できれば合流したいな。モノレール周辺、やっぱり怪しいお兄さんたちがいるみたいだし) 自分の能力を卑下する訳ではないが、アビィを守りながらそれらの追手を追い払うのは少々厳しい。 BFは戦闘能力を持ってはいるものの、圧倒的に脆い。数発殴られただけでも崩壊する。作り出すBFにありったけのアイテールを注ぎ込めば強くも出来るが、そもそも銃を所持しているかもしれない大人数を相手に徒手空拳だけで挑むなど無謀極まりない。 だからティアとは是非とも合流したいのだが……と、法師は不意に自分の周囲に不自然なアイテールの流れがあるのを感じた。 流れの正体は直ぐに判明する。自分の背後から流れを感じたからだ。 「こらアビィ。人が考え事をしてる時に横から意識を覗くのはよくないぞ?」 「ご、ごめん……なさい。つい癖で」 「敬語、使いにくいならしなくていいよ。それで、何で覗いたんだい?」 「ノリカズならあの青い絨毯みたいなののこと知ってるかなって」 「青い絨毯?」 そんなものはこの周辺には存在しない筈だが。 この辺りで見える青いものと言ったら空か、この辺りからよく見えるようになる海くらいしか―― 「ウミ……あれが海なんだ!なんだか光ってて綺麗……白い線が動いてて、まるで生物みたい」 「あー……海の事も知らなかったか」 車が橋の上に乗る。 数年前に出来たかなり大きな橋であり、今まではモノレール駅までたどり着くために海岸線を大回りしなければいけなかった道を直通に変えたものだ。待ち伏せの可能性もあるが、橋以外の道は渋滞に捕まるリスクが高すぎて止めた。 アビィは真横にまで近づいた人生で初めての海がよほど気になるのか窓に張り付いて外を眺めている。彼女の言う白い線というのは恐らく波の事だろう。行き交う車にも目移りしていた彼女の興味は、既に海へと完全に傾いていた。 「海についてはどれくらい知ってるんだ?」 「わかんない。時々、大人が『海の向こう』とか『海の底』とか言ってたけど、魚っていう生き物が住んでることくらいしか分からなかった」 海の事を知らない人生など、法師には考えも及ばない。 彼女の口ぶりでは、海が水で構成されているという事実さえ知らない可能性がある。川や湖は知ってるだろうか。池やプールの意味は。魚のことを見たことはあるのか―― 彼女は一体どれほど知るべきことを知らずにいたのだろうか。 それを考えると、一刻も早くこの少女を閉じ込めていた環境を取り払ってやりたくなる。 大蔵さんが上手くやっていれば後顧の憂いも断てるかもしれない。 そうすれば彼女も人並みにいろんなことを勉強し、体感できるはずだ。 「なら今回の件がひと段落したら行ってみるか?今日は無理だがそのうちな」 「本当!?約束だからね、ノリカズ!嘘ついてない!?」 次の瞬間、アビィは問答無用で意識結合(ユナイテッド)を実行した。法師は短い間、アビィと再び意識を共有した。 能力を使い慣れているというか、アビィは法師が彼女が分から発信された情報を具体的に読み取る前に自分の欲しい情報を拾って満足したらしく、直ぐに能力を切断した。 「嘘じゃないんだね!」 嬉しそうにぱっと顔を輝かせるアビィだが――今、ものすごく危ない事をしたことは自覚していないだろう。 結合解除と同時に法師はハンドルを取り直して彼女を叱責した。 「嘘じゃないのはいいけど、車の運転中に意識結合しちゃ駄目っ!!いますっごく危なかったから!!分かった!?」 「え……?」 彼女は車の運転という行為を軽く考えていたのかもしれない。 その危険性を知らないがゆえにあんなことが出来たのだ。 意識結合を使用中は、思考が共有される。 しかし結合中は基本的に神経が肉体より精神に重点的に向く為、肉体の動きが鈍くなるのが普通だ。咲くほどの彼女の結合はかなり強く、法師は一瞬ハンドルを取る手と視界がゼロに近づいていた。 それは運転中に急に目隠しをされるようなもの。 控えていたBFが慌ててハンドルを取ってくれなければ事故になってもおかしくなかったのだ。 「わ、わたし悪いことしたの?」 突然の叱責にアビィは完全に狼狽えていた。 何所に向けていいのかも分からない手をおろおろ動かして一種のパニック状態になっている。 アビィとしては、さっきまで仲の良かった友達が突然怒ってしまい、その訳が分からないという状態だろう。 やはり、精神的にはかなり未熟だ――と法師はため息をついた。 「した!何で悪いのかは後で説明してあげるけど、いくら気を許してるからってそんなに気軽に異能を使っちゃ駄目!……いいね?今のは俺もアビィも両方が危なかったんだ。もどかしいかもしれないけど、今は言葉だけで確かめてくれ」 「……………」 しゅんと肩を縮ませて無言で首肯したアビィは、酷く沈んだ顔で窓の外へ頭を向けた。 抱く感情は落胆か、それとも失望だろうか。こうも落ち込まれるとこちらが悪い事をしてしまったかのような錯覚に陥ってしまう。 嫌われていなければいいが――そう内心で呟いた法師に、アビィから再び声がかかった。 「ノリカズ」 「なんだい?」 「……ごめんなさい」 「……こっちも怒鳴って悪かったよ。BFにしっかり説明させるとか他の方法があったのにな」 自分は想像以上に子供の相手をするのに向いていないのかもしれない。未熟な精神とやらは人のことを言えないか、と苦笑した。 「お呼びかな、俺?さっきは俺がそれを望んでいなかったから何も言わなかったが、俺ならば今からでも何の問題もなく彼女に事情を説明し、なおかつ落ち込ませないようにやんわり注意して見せよう!」 「それは俺に対する嫌味かあてつけなのか!?やっぱりお前は黙ってすっこんでろ!」 「………くすっ」 アビィに笑われた。 少々恥ずかしい気分になったが、これもBFのせいだと思う事にしておく。 車は橋の中腹までたどり着く。モノレール駅までは間もなくだ。 |