のつぶやき |
2014年 03月 14日 (金) 19時 11分 ▼タイトル ホワイトデーネタ 超短編 ▼本文 その日の仕事を終えて、長い廊下を歩いていた。 ふと、楽しそうな歌が聴こえて脚を止める。その場所は厨房の前、聞こえてくる歌は意味を理解出来ない単語が多かった。 そのような単語を知っているのは一人しかいない。 扉をそっと開けて覗き見ると……甘い匂いが迎えてくれた。 中ではくるくると忙しなく料理をしている彼。 ニコニコ笑顔で手際よく動く様子が普段の彼からは想像も出来ないくらい可愛く見えて、少し胸がときめいた。私も手伝ってもいいだろうか。 ふいに、視線が交差した。 「お、おう」 「あわわ……」 私も彼も、何を言っていいか分からなくて変に言葉が漏れる。 ――何を作っているんですか? そう尋ねようとしたが、すぐに彼は意地悪な顔に変わり、 「見なかったことにしないと雛里にはあげない」 とだけ言って私から目線を切って料理に取り掛かった。 教えてくれてもいいのに。 そういえば、この甘い匂いは覚えがあった。私の大好きな…… すぐに扉を閉めて廊下を進む。 嬉しさと期待で弾む胸を携えながら。 後日、皆は夕食の後にそれぞれの部屋に届けられた彼からの贈り物の話をしていた。 ほわいとでぇ。ひと月前の贈り物に対するお返しとの事。 彼からのお返しは大好きな甘味である『ほっとけぇき』 わざわざ店長さんのお店から材料を取り寄せてくれたらしい。 ただ、私と朱里ちゃんのだけは別のモノも贈られていた。 藍色と朱色の押し花を厚紙にあしらった栞。 くっきぃのお返し、とのこと。 本が好きな私達の事を考えてくれたんだと胸が暖かくなると同時に、相変わらずの鈍感さで伝えた気持ちに気付いてくれなくて少しの落胆はあったけど、めげずに頑張ろうと二人で決意を固めたのでした。 ―――――― 忙しくて時間が足りないので超短編となってしまいました。すみません。 ではまたー |