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海戦型さん
のつぶやき
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2019年 03月 14日 (木) 01時 07分
▼タイトル
ネタ・転生モノ 「ゴブリンスレイヤー廃業す」2/2
▼本文

 中にゴブリンは見当たらない。念のため隙間なども念入りに探すが、最深部に行っても見当たらない。隅々探すと孕み袋にされてた女性が何人か息のある状態で見つかったが、一人で抱えきれないのでその場で悩み、そしてここでもアイテムを使う。

「これ読んで」
「スクロール……?えっと、『困ったときの巻物』――はっ!?ゴブリンに折られた手が!汚された体が!?体力まで回復してる!?」
「よし、これで歩けるね!」
「こ、こ、このスクロールものすごい貴重品だったのでは!?」
「こんなものを私たちの為に人数分使ってしまうなんて……!」
「気にしない気にしない。人命救助が最優先だよ?」
 
 慌てる女性たちを宥めて教会に任せ、あたしはその後数日間ゴブリン依頼が張り出されないかギルドのクエストボードを定期的に見つめた。しかし、張り出されることはなかった。ちなみにアタシは冒険者登録しているが、件のゴブリン討伐に関してはクエスト受諾をしていない。足がつくのが嫌だし、「条件に引っかかる」可能性があったからだ。
 三日もすると冒険者やギルドの人が不思議そうに「最近ホブゴブリンばっかりでゴブリンが出ない」と語り、そして1週間後には「ゴブリンがどこにもいない!」と捜索部隊が結成されるに至り、そして一月後には「小型のゴブリンが一切いなくなった!?」と王都で騒がれるようになった。この段階に至ってやっと、アタシは自分の作戦が上手くいった事を悟った。

 ホブゴブリンやその他上位ゴブリンはいまだに確認されているようだが、取り巻きがいないゴブリンなどただのデカイ魔物だ。小型ゴブリンの繁殖が完全に途絶えている。狙い通りだ。

 アタシが神様に転生特典として頼んだもの。

 それは「風来のシレン」というゲームに登場する使い捨てアイテム「巻物」を自分で製造できるというスキルである。

 風来のシレンではこの使い捨てアイテムが非常に有用であったり、逆に読むことでとんでもない事態に陥ったりするするのだが、あのゲームでは識別の巻物というアイテムがないと拾ったアイテムの名前が判別できなかったりするからこそのランダム性であり、自分で一から巻物を作れるのであればなんのデメリットもない。

 そして「ジェノサイドの巻物」とは、その巻物を投げつけた相手が『ゲームクリア、もしくはゲームオーバー、もしくは同じジェノサイドの巻物を他の敵に命中させる』の三つのどれかの条件を満たさない限り、フィールド上から永遠にジェノサイドしてしまうという強力な巻物なのだ。
 一部例外はあるが、ゴブリンはその例外に当たらない。これから未来永劫、多分だがアタシが死ぬまではゴブリン種は増えない。アタシはクエストを受注していないので『クリア』もない。この四方世界は全て遊び場なので、イコール世界そのものがダンジョンと解釈されたのも都合がよかった。

 ホブやロードが生きているのは、ジェノサイドの巻物は当てたモンスターの進化種や進化前の種に効果を及ぼさないことが関係しているのだろう。しかしシレン的にはレベルダウンでゴブリンになったらそいつはジェノサイドされないが、そもそも新しくゴブリンが生まれないのでゴブリン共は永久に繁殖で数を増やせないのである。

 この世界ではゴブリンは絶えず繁殖し、子を為し次代に命を繋ぐ筈の女性を中心に襲い犯し、家畜をや農作物を食い荒らし、莫大な経済的損害を人類に与え続けている。つまりゴブリンがいなくなれば出生率は上向き、食糧供給もスムーズになり、後方がゴブリンの群れに襲われることもなくなる。イコール人類側にかなりプラスになる筈である。

 アタシは自分の計画が上手くいったことに満足すると同時に、ちくりと痛む良心の理由を口にした。

「ごめん、ゴブリンスレイヤー。世界で唯一ゴブリンが全滅して途方に暮れるであろう人」

 牛飼い娘ちゃんと仲良くニャンニャンして余生をゆるりと送ってください。
 金髪の子ヒロインになる筈だったのにかわいそう。
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