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海戦型さん
のつぶやき
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2019年 03月 08日 (金) 02時 39分
▼タイトル
流氷の微睡み2-1
▼本文
 これ投稿したら寝ようと思ってたら投稿不能で書いてた文丸ごと消滅したので文章の再構成をば。

 = =

 微睡みから目を覚ましたエデンは、自分の横たわるベッドが普段のものではないことに気付く。
 ぼうっとした目で寝返りを打って周囲を見回し、そこで部屋にある見覚えのあるソファの上に毛布や布団の塊が乗っていることに気付く。リクライニングして簡易ベッドに出来るからとエイジが買ったソファだ。ということは、あの布団と毛布の塊の中にはエイジがいるのだろう。

(エイジの部屋でそのまま寝ちゃった、か……)

 お風呂に入り損ねてしまった。魔女になってから変な法則が体に働いているので一日入らなくとも意外と臭くなったりはしないのだが、汚れが無くなるわけではない。エイジのベッドを則った挙句汚してしまったと思うと、申し訳ない気持ちになる。
 起き上がろうとして、ふと枕の方に目を向ける。
 ちょっとした好奇心で顔をうずめて匂いを嗅いでみた。

(匂い……するよね。八千夜ちゃんは匂いがしないって言ってたけど)

 父とも兄とも違うエイジの不思議な匂いに、不快感はない。むしろ安息感すらある。そのまましばらく匂いに包まれ続け、数分後にハッと急に恥ずかしくなって身を起こす。エイジが同じ部屋で寝ているのに何をやっているんだ。親しき家族にも礼儀ありだ。

 時計を見る。元はエイジの家にあったという、一つ150万円の超高級置時計だ。時計職人のオーダーメイドで、時間の狂いは100年に1秒以下なのが売りらしい。エイジ的には市販の時計は時間のずれが気になり、ネットや電波で時間を合わせる時計は合わせるまでのラグが気になるらしい。その時計が指し示した時間は、8時過ぎだった。

「遅刻っ!!」

 普段なら8時はもう朝ごはんを食べていなければいけない時間だ。慌ててスマホを取り出してWIRE(既読スルーは嫌われる)を立ち上げて先生に遅刻の連絡を入れようとすると、先生からメッセージが来ていた。曰く、昨日の騒ぎの後処理などがあるので授業は中止になったらしい。
 慌てて損した、とベッドに再び寝込んで匂いを嗅ぎ、そうじゃないと慌てて起き上がる。先生からの連絡には続きがあった。曰く、暁家が9時面会を希望していると。あまり多く時間が残されていない。

「エイジ!エイジ起きて!パパとママが来るって!!」
「……最短で行動すればまだ12分の時間的猶予がある」
「バッチリ起きてる上に事情まで把握してるじゃない!」

 二人はシャワーを浴びて着替え、食堂でゆっくり食べる気分ではなかったので購買で適当に朝食を済ませる。家族が面会を希望する理由は分かり切っている。息子と娘がテロリストに襲われて平気な顔をしていられる人ではない。ちらりとネットニュースを見ると、大見出しは『聖観学園にテロリスト襲撃、負傷者多数』の文字が躍っていた。少しだけ内容をのぞいてみる。

『天孫に管理を任された学園側の慢心が生み出した悲劇――』
『現場教師、テロリストを取り逃がした素質と判断の是非は――』
『テロリスト逃走後に追跡に失敗した皇国軍の動きに問題は――』
『危険な外国人を国内に侵入させた入国管理局の実態――』
『聖観学園理事長、午後0時より会見。彼女はどんな言い訳を――』

 責任をひたすらに擦り付け合う大人たちの言葉が、そこにはつらつらと並んでいた。
 悲しい気分になって、エデンは見るのをやめた。

 現場で本当に起きていたことを何一つ知らずに画面の向こうから知ったような口を聞く外野たち。現場にいたエデンには致命的に受け入れられない、実情と乖離した情報が外へと発信されてゆく。それはまさに、美音が罵った『汚い大人』を連想させた。

 エデンは大人をそんなにも頼れない存在だとは思えない。愛する両親、近所の人。兄の浄助だってもう成人だ。先生は遅れつつも一番危ないときに助けに来てくれたし、永海は民間警備会社の大人たちに助けてもらったと聞いている。

 それでも、大人は頼れないと断言する美音を否定する勇気が出なかった。
 美音が怖いのか、美音の過去を知るのが怖いのか、或いは彼女たちと衝突し、取り返しのつかない仲たがいをしてしまうのを恐れているのか。自分でも取り払えないもやもやを抱えながら、エデンはエイジと共に出来る限り急いで面会指定場所へと向かった。
 
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