のつぶやき |
2019年 01月 01日 (火) 17時 59分 ▼タイトル 2275−4 ▼本文 『本艦、ホワイトベースは、これからルナツーへ向かいます。ただし、こちらに入った情報によると、現在ルナツーにおいて戦闘中らしいので、その場合は月に向かう事になります』 その放送は、ブライトではなくミライの声だった。 ……にしても、上手いな。 今の状況でルナツーにおいて戦闘が起きていると言われても、普通に考えればそれは連邦軍とジオン軍の戦いとしか思えないだろう。 実際にはルナ・ジオン軍がルナツーを攻略しようとしているのだが。 正直にそれを口にしないのは、やはりホワイトベースの向かう先がルナツーの様子を見て、それが駄目だったら月だからというのが大きい。 とはいえ、正直なところ、普通に考えればルナツーから月に行くよりは、そのまま地球に向かった方が手っ取り早いと思うんだが。 それが出来ないのは、物資不足というのもあるし、連邦軍本部のジャブローからの指示を貰う必要があるというのもあるし、何より地球の上空にはジオン軍が陣取っているというのも大きいからか。 ……戦力の不足というのもあるんだろうが。 ともあれ、そんな感じによって現在のホワイトベースとしては、月に向かうという選択肢しか存在しない。 いやまぁ、それこそサイド6を始めとして他のコロニーに寄るという選択肢もあるのだろうが、そこでは満足に武器の補給とかを受けられない。 あるいは、月で補給を受けられないとなれば、最後の手段としてサイド6とかに寄った可能性はあったが。 『尚、ルナツーで戦闘が行われている場合、本艦は戦いに参加することはせず、速やかのその場を離脱して月に向かう予定です』 ミライがそこまで言うというのは、少し驚いた。 実際、格納庫にいる面々の中にも不安そうにしている者がいたのだから。 月の防御が固いというのは、それこそ少しでも情報に詳しい物であれば知っているだろう。 ましてや、バルジのような機動要塞が幾つも存在している以上、迂闊に戦力が近づけば、そこから攻撃されるという可能性も否定は出来なかった。 だが、そんな者達の不安を鎮めるように、ミライは言葉を続ける。 『また、既にルナ・ジオンとの話はついており、その首都であるクレイドルにて補給を受けることが可能です。また、現在ホワイトベースにはサイド7の難民の方が多く乗っていますが、希望者はクレイドルにて降りて、そこに住むという選択肢もあります』 この言葉には、ガンタンク隊の面々……そして残念ながらパイロットに選ばれない者達ですらも、驚きと嬉しさを表情に浮かべる。 いつまでもホワイトベースに乗っていなければならないというのと、明確に月まで向かえばそこで降りられるというのとでは、その不安は大きく違ってくる。 先行きが全く見えない不安はなくなり、避難民達が自暴自棄になったりしないというのは、ホワイトベースを運営する上で、非常に望ましい。 中にはホワイトベースに残って地球に行くと言い張る奴もいるかもしれないが、そういう連中についてまでは、気にする必要はない。 自分で選んでその道を選択したのだから。 『なので、もう少し我慢をお願いします。ホワイトベースの中で何らかの騒動が起きた場合は、連邦軍としても色々と対処しなければならなくなりますので』 そう告げるミライの言葉に、不満を漏らす人物は……取りあえず、格納庫の中にはいなかった。 もっとも、どのような事であっても不満を口にする者はいる。 だからこそ、今のミライの言葉を聞いた後でも、完全に安心は出来ないのだが。 そう思いつつ、それでも避難民達の不安が解消された事に、一応の安堵をするのだった。 |