のつぶやき |
2018年 12月 29日 (土) 18時 00分 ▼タイトル 2272−2 ▼本文 「入ってもいいぞ」 その声に扉が開き、顔を見せたのは……俺にとっては完全に予想外な事に、フラウだった。 「フラウ、だったよな。どうしたんだ?」 俺のところに1人で来たと知られれば、アムロには怒られるだろうに。 そう思っていると、フラウは俺の方に何かを渡してくる。 ……食料? 勿論俺が雑誌で見ていたような店で作られたような立派な料理という訳ではなく、あくまでもホワイトベースで用意された戦闘食という奴だ。 その事に少しだけ驚きつつも、それを受け取る。 「悪いな」 「いえ」 手料理ではなく、機械的に生産された……そう、ファーストフードに近い食事。 それでも、渡された長方形のお盆くらいの上に掛かっていたアルミホイルに似たシートを剥がすと、そこには若干冷めかけているものの、ハンバーグとサンドイッチ、サラダ、シチューが1つの食器の中に入っていた。 どこかお子様ランチを思い出すような作りだが、当然のように国旗が立っていたりはしない。……まぁ、基本的にこのUC世界においては国というのは連邦軍だけというのが建前だしな。 ジオン公国やルナ・ジオンは、半ば黙認という形で実質的に国家的な扱いを受けているのだが。 「ねえ、フラウお姉ちゃん。まだ?」 俺が食事に視線を向けていると、扉の向こうから黄色い髪の少女……幼女? が顔を出して尋ねてくる。 恐らく、フラウが子守も兼ねてこの子供達の相手をしているのだろう。 ……正直なところ、本当にそれでいいのか? と思わないでもないが。 ともあれ、そんな訳でこのままここで時間を取らせると面倒な事になりそうだと判断し、俺はフラウに向かって口を開く。 「わざわざ持ってきてくれて悪いな。後はこっちで食べるから、もういいぞ。そっちの子供達も退屈しているみたいだし」 「あ、その……すいません。ただ、ちょっとお礼を言いたくて」 「……お礼?」 「はい。コロニーで私や両親を助けてくれたじゃないですか」 「……ああ、地割れの時」 正確には地割れではないのだが、取りあえずそっちの方が分かりやすいのは間違いない。 あの時、俺は空を飛びながら半ば強引な手段を使ってフラウ達を助けた。 そのおかげで、恐らく俺の正体がブライト達に予想されたのだろうが……まぁ、フラウ達を助けなくても、恐らくアムロからその辺りの情報が伝わっていた可能性が高い。 なら、フラウ達を助けても問題はなかった筈だ。 「別にそこまで気にする必要はないだろ。わざわざあそこで死ぬより、助かった方がよかっただろうし」 「はい。とにかく、ありがとうございました」 再度頭を下げると、フラウはそのまま部屋から出て行く。 そんなフラウの様子に、金髪の少女といつの間にか部屋を覗き込んでいた黒人と日系人らしい2人の少年も、不思議そうにこっちを見てくる。 何故フラウが俺に向けて感謝の言葉を口にしたのか、その理由が分からなかったのだろう。 まぁ、この子供達はあの現場にいなかったしな。 ……というか、よくもまぁ、こんな子供達だけでホワイトベースに到着出来たなという思いの方が強い。 ともあれ、そうやって部屋から出て行ったフラウ達を見送ると、俺は早速食事に手を伸ばす。 正直なところ、俺は食事をしなくても全く問題はない。 ないのだが……今の状況でそんな事を言える筈もなく、大人しく料理を口に運ぶ。 どの料理も、決して美味いという訳でないが、それでも不味くもない。 普通の味、というのが一番相応しいだろう。 ……もっとも、マブラヴ世界の合成食に比べると比べものにならない程に美味いと言ってもいいのだが。 そんな食事をすませつつ、ホワイトベースの備蓄食料がなくなったら、俺の空間倉庫にある、サイド7で買い貯めした食料を提供しようと考える。 もっとも、ルナツーを経由して月に向かう程度であれば、今も積み込んでいる食料とかで十分間に合うような気もするが。 |