のつぶやき |
2018年 12月 28日 (金) 18時 00分 ▼タイトル 2271−4 ▼本文 ブライトの口から出たのは、俺にとっては予想外な言葉だった。 いやまぁ、可能性としてはあるかもしれないと思っていたが、それでも本気でその選択肢を選ぶとは思っていなかった。 その選択肢を選んだという事は、つまりルナツーで連邦軍に味方をしてルナ・ジオン軍と戦うという事を意味しているのだから。 正直なところ、それはホワイトベースにとって最悪の選択肢のように思える。 だが、パオロを含めた面々で話し合ってそう決めたというのであれば、俺からはそれ以上言うべき事は何もない。 「そうか。なら、悪いが俺とメリルはこの辺で失礼させて貰う。そっちも、ルナツー近くにホワイトベースが移動した後で、唐突に俺達が裏切るといった真似はされたくないだろうし」 「待て。あの赤い彗星と互角にやり合えるイザークをそのまま放り出すつもりはない。それに、ルナツーの近くまで行くとは言ったが、実際にルナツーで連邦軍に……いや、タカ派に協力するとは言っていない」 「……ほう?」 メリルを連れてその場を去ろうとした俺の背中に掛けられたのは、ブライトのそんな言葉。 その言葉は、ブリッジを出ようとしていた俺の足を止めるには十分なものだった。 「さっきも言ったと思うが、ルナツーは現在ルナ・ジオン軍に襲撃されている。いや、場合によってはもう攻略されている可能性も高い。にも関わらず、ホワイトベースはルナツーの近くまで言って……その上で、戦いには協力しないと?」 「そうだ。正直なところを言わせて貰えば、ルナツーが一時的にとはいえ、ルナ・ジオン軍の手に渡るという事態は可能な限り避けたいと思っている。だが、もしホワイトベースがルナ・ツーに到着して、そこにまだタカ派が生き残っていた場合、ホワイトベースを接収する可能性は高い。連邦軍の軍人として、そんな事は絶対に許容出来ない」 「……なら、何の為にわざわざルナツーに行くんだ? それこそ、ルナツーに協力するつもりがないのなら、真っ直ぐに月に向かってもいい筈だが?」 そう、ブライトの言葉を聞いた時にそれが最初に感じた疑問だった。 ルナツーに向かうのに、連邦軍の助けをする訳ではない。 だからといって、ブライトの性格から考えて連邦軍を裏切り、ルナ・ジオン軍に協力するといった事をするつもりもないのは間違いない、 では、何故わざわざルナツーに向かうのか。 そんな俺の視線に、ブライトは少しだけ黙り込んだ後で口を開く。 「簡単に言えば、本当にルナツーがルナ・ジオン軍に攻撃されているのかを知りたいからだ。本来なら、ルナツーが攻略されているのであれば援軍を求める連絡が来てもおかしくはない」 「……ミノフスキー粒子が散布されていれば、通信は繋がらないんだろう? なら、それが理由だとも思わないか?」 「思わないな。もし通信が駄目でも、人を寄越すといったことは出来る筈だ」 「ルナ・ジオン軍は精鋭だぞ? もしサイド7なりどこなりに連絡を取るにしても、その前にルナツーを出撃した部隊は全機補足されていてもおかしくはない」 実際に、ルナ・ジオン軍は精鋭揃いなのは間違いない。 また、あの演説で連邦軍に対する……いや、ルナツーに対する怒りは振り切れている者が多く、逃げようといても全機補足して撃滅するなり、捕らえたりしていてもおかしくはない。 そう告げるも……それでも、ブライトの口から出た返事は変わる事がなかった。 |