のつぶやき |
2018年 09月 05日 (水) 22時 59分 ▼タイトル 人生で一番衝撃だった本の話 ▼本文 毎度どうでもいい話でお馴染みだった時期のある私のどうでもいい話です。 これは、今のところ私の人生の読書で最も衝撃的だった本のお話。 神林長平 著、「プリズム」。 神林長平氏はアニメ化もした「戦闘妖精・雪風」から知ったのですが、それでもプリズムは衝撃的だったですね。ちなみに戦闘妖精と聞いてファンシーなイメージをした貴方はチキンブロスを食べてから小説を読んでみるといいですよ。シリーズもので現在3巻まで出ています。もう全巻10回以上は読み返したほど好きです。 (※プリズムの世界はかなり難解なので、解釈の違いによるズレ等で実際の内容と完全に合致していないかもしれません) プリズムの世界は、簡単に言えば超未来の管理社会で起こるお話なのですが、極度に発達した科学が途中から理屈を超えた現象を引き起こし、圧倒されるほどの幻想的な展開に息を呑みます。複数の物語が同時進行的に続いていくのですが、そのすべてが全く別の世界に見えるほど巧みに、バラバラに、しかし同一の世界の中で引き起こされてゆく様たるや、圧巻のほかに言葉が見つかりませんでした。 で、この作品には「色の世界」から来た神・神獣のような存在が登場します。元々の管理社会では全く認識されていない存在です。色という安直でありふれた世界を語るにも関わらず、この「色の王」たちの存在感、人知が及ばない彼らの世界の事を口にするところがもう、ぞくぞくしました。 彼らの奥に、既存のどんな神話や概念も通用しない全く新しい神話の世界が垣間見えるんです。しかもそれを、SF全開の未来世界で、科学と対立するかのように展開していく。そして最後はもはや理屈さえ超えたドラマチックでファンタジーでSFなエンディングが用意されていた。最後まで衝撃でした。 この小説で強く思ったことは二つあります。 極度に高度化した科学社会は、いずれ魔法を超えたファンタジーに到達する。 ファンタジーは元々この世に非ざる世界、法則を幻想することが始まりであって、決して「ファンタジー」というテンプレートな世界で好き勝手やろうという思想が根底にある世界ではなかった筈なのです。そこにはあり得ないもの、想像を超えるものがあって、それを説明する為に魔という形式を用いただけなのです。 つまりファンタジーもSFも源流は同じ、未知の世界へ想いを馳せることなのです。 そしてもう一つ。ファンタジー世界の存在や法則、神話の神といった存在は、作ればいい。 これは他の人達からしたら理解に苦しむ、或いは嫌悪感すら覚える話かもしれませんが、あの「色の世界」を見た時、なんでもかんでも神話から格好いい感じの名前や力を持ってきていた自分をひどく恥じました。既存の神話を持って来れば分かりやすくはあるかもしれないけど、そこに未知への期待感はない事に気付いたんです。 オリジナルの小説を本当に作るということは、文字の先に既存のそれと全く違う世界を構築しなければならない。それは苦しいことのようで、実は何の制約も存在しないということなのだと思います。 総論。プリズムという小説は私のSF観とファンタジー観を見事に塗りつぶしてくれました。 それがいい事か悪い事かまでは判別がつきませんが、とにかく小説の世界を見る目が変わったことは事実です。 |