のつぶやき |
2018年 06月 04日 (月) 17時 57分 ▼タイトル 2064-4 ▼本文 ゆかりと美鶴、2人の声が同時に響き、そのまま飛びついてくる。 それを受け止め、2人の肉感的な身体をしっかりと抱きしめる。 「っと、危ないな。そこまで心配する必要はなかったと思うんだけどな」 「馬鹿っ! 心配するに決まってるじゃない!」 「そうだ。全く、私達に心配を掛けるような真似ばかりして……大体その身体は一体どうなっている」 「そうよ。しっかりと話を聞かせて貰うからね」 力強く抱きしめられるのは嬉しいんだが……他の面々の視線がちょっとな。 特に荒垣含めたS.E.E.Sの面々は、見るからに気まずそうな表情を浮かべている。 ……多分、混沌精霊としての俺の姿について、色々と聞きたかったんだろうな。 だが、それを聞くよりも前に、ゆかりと美鶴が飛びついてしまったのだ。 ゆかりと美鶴を抱きしめつつ、その頭を軽く叩く。 それが離れて欲しいという合図だと気がついのか、2人は俺から離れていく。 若干、まだ目に涙を溜めて心配そうにしていたが……これから立ち向かうのは、デスよりも強い、シャドウの母たる存在、ニュクスだ。 そうである以上、こちらとしてもいつまでも時間を掛ける訳にはいかない。 そうして、ゆかりと美鶴の2人が離れたのを確認してから、改めて荒垣達の方に視線を、向ける。 「悪いな、色々と聞きたい事はあるんだろうが、今は後回しにしておいてくれ。ニュクスを倒したら、色々と纏めてその辺の話を聞いてやるよ」 「……ふん。無事に帰ってこい。そうしたら、お前が好きだというエビフライを作ってやるから、それを食いながら話を聞いてやるよ」 いつも通りぶっきらぼうな荒垣の言葉だったが、それは俺に対して生きて戻ってこいと……ニュクスに勝てと、そう言っていた。 「ああ、特大のエビフライを期待してるよ。それに、ホワイトスター……シャドウミラーの本拠地には、思い切り腕の良い料理人もいるからな。お前には色々と貸しもあるし、ホワイトスターで働く事になったら、その料理を食べる事もあるかもしれないな」 そう告げ、他の面々とも少しだけ言葉を交わし……空間倉庫から、ニーズヘッグを取り出す。 俺の分身とも呼べるその期待は、相変わらずラスボス系……もしくは隠しボス系の姿をしている。 いやまぁ、俺の存在その物が、とてもではないが正義の味方とは言えないんだし……その辺りはおかしな話じゃないk。 そんなニーズヘッグに視線を向けていると、ニーズヘッグの方も俺の視線を感じたのか、微かに脈動した。 どうやら、ニュクスという、この世界の最大の敵との戦いが近づいていると、ニーズヘッグも理解しているらしい。 そんな風に思っていると…… 「アクセル」 声が聞こえ、振り向く。 そこにあるのは、ゆかりの顔。 そして、有無を言わさずに唇を重ねられる。 そのまま数秒、やがてゆかりの舌が俺の唇を割って入ってくると、俺の舌と激しく絡み合う。 そして1分程が経ち、やがてゆかりが離れ…… 「アクセル」 続いて俺の唇は美鶴の唇に塞がれ、舌を絡め合わせる。 こちらも1分近くの間キスを続け……やがて、離れる。 「私と美鶴先輩という、勝利の女神のキスが2人分なんだから、絶対に勝ってきなさいよ」 「私とゆかりは、まだ夜のアクセルには勝てないが……そのままにはしておかない。いずれ、アクセルに勝ってみせる。だから、私とゆかりにお前の存在を刻みつけたんだ。当然、責任は取って貰うぞ」 死ぬな、と。 暗にそう言ってくる2人。 ……離れた場所では天田達が今の2連続のキスシーンを見て顔を真っ赤にしていたが、それは気にしないでおこう。 そうして、俺はニーズヘッグのコックピットに座り、機体を起動させる。 『アルマー君、いいかい……来るよ?』 やがて聞こえてきた望月の言葉。 そして次の瞬間、影時間の空間を割るかのように、上空から巨大な目のような物が存在する球体が……月が、ニュクスが、姿を現すのだった。 |