のつぶやき |
2018年 06月 04日 (月) 17時 56分 ▼タイトル 2064-1 ▼本文 異形化。 そう呟いた瞬間、俺の身体に異変が生じる。 頭からは角が伸び、背中からは羽根が生え、腰からは竜尾が伸びる。 また、身長も10代半ばから20代の、俺本来のものへと変わった。……否、戻った。 まさに、異形化と呼ぶのに相応しい姿。 『これは……』 このような変身は、デスにとっても完全に予想外だったのだろう。 明らかに驚き、呆気にとられている様子が見てとれる。 「機会がなかったから言わなかったけどな。俺の種族は人間じゃない。……いや、正確に言えば、元人間といったところか」 『元、人間?』 「そうなる。そして今の俺の種族は……混沌精霊」 『混沌精霊』 先程から、デスは俺の言葉を繰り返しているだけだ。 だが、それだけ俺の異形化の姿に驚いているという事なのだろう。 もっとも、今の俺の姿は下手なシャドウよりも化け物染みている。 シャドウの親玉……いや、本当の意味で親玉はニュクスである以上、このひょうげんが正しいのかどうかは分からないが、とにかくデスにとっては、信じられないような姿だったのは間違いないらしい。 「そうなる。まぁ、俺にも色々と……本当に色々とあったんだよ。その結果が、今のこの姿な訳だ。もっとも、これが俺の本性って訳じゃない。今まで見せていた姿だって、俺の姿である事には違いない。これは……そう、言ってみれば、俺が本当の意味で本気で戦うという決意の表れに近いな」 勿論、この形体になったからこそ、使える攻撃方法とかもある。 それこそ、角や尻尾による攻撃は、この姿になったからこそだろう。 特に尻尾。竜尾は俺の思うように動かせる代物で、第3の手とでも呼ぶべき姿をしている。 デスの使う闇の衣とに比べると、手数は少ない。少ないが……それでも大分マシになるのは確実だった。 『……少し予想とは違う方向に凄いね』 デスの口調が少し呆れた様子だったのは、きっと俺の気のせい……という訳ではない。 望月らしい口調を残しているその様子に、思わず笑みを浮かべる。 「予想と違った方向に凄いってなら、それはお前もそうだろう? 今のお前には、望月の面影はあるが、以前とはかなり違うぞ」 『そう言われると、こっちも何も言い返せないね。……さて、それじゃあ始めようか』 そう言った瞬間、望月が長剣を大きく振るう。 とてもではないが、俺には届かない間合いでの攻撃。 だが……今の状況で望月が何の意味もないような真似をする筈もないので、俺は瞬動でその場を回避する。 すると次の瞬間、半ば俺の予想通りに、俺のいた場所にある地面を幾つもの斬撃が襲った。 そうして離れた場所に移動すると、奥の手の1つを放つ。 「スライム」 今日、タルタロスで次々とそれぞれの階を攻略していった、最大の手段。 その銀色の……一見すると水銀のように見えなくもない空間倉庫から姿を現す。 『なんと』 空間倉庫やスライムについては知っていたのか、知らなかったのか……その辺りは俺にも分からないが、ともあれスライムに一瞬驚いたデスは動きを止め…… 『夜の女王』 そう、短く呟く。 その呟きがスキルの発動を意味しているというのは、すぐに分かった。 デスに向かっい、それこそ津波の如き勢いで向かっていたスライムが、その瞬間に粉々になったのだから。 もっとも、砕かれたスライムはすぐに周辺にある別のスライムの身体と合流し、あっという間に元に戻ったのだが。 |