のつぶやき |
2018年 06月 02日 (土) 18時 02分 ▼タイトル 2062-4 ▼本文 「じゃあ、任せた。ゆかり、美鶴、行くぞ」 「分かったわ」 「うむ」 ゆかりと美鶴の2人も、俺の言葉に頷くとその場を後にする。 当然のように、タカヤはそんな俺達に視線を向けていたが、先程口にした通り、邪魔をしてくるような事はなかった。 タカヤにとっても、こっちの戦力が分散してくれるというのは、願ったり叶ったりといった事か。 そのまま次の階に向かおうとしていた足を止め、ふと気になるっている事をタカヤに尋ねる。 「タカヤ、お前はこの先に何が待っているのか、知っているのか?」 「……さて、どうでしょうね。ただ、破滅と呼ぶべき存在がいるとは思ってますよ」 笑みと共にそう告げる様子は、全くいつもと変わらない。 この状況で表情が変わらないというのも、凄いよな。 「そうか」 タカヤの様子を見る限りでは、素直に何かを言う様子もなかったので、これ以上は無意味だと判断する。 そうしてその場を後にして……すぐに背後から、激しい戦闘音が聞こえてきた。 何だか雷の音がしてきたけど、誰の攻撃なのやら。ともあれ…… 「急ぐか。屋上では望月が待ってるだろうしな」 2人にそう言うと、2人が頷き、走り出す。 当然のように途中の階では、邪魔にならないようにスライムをシャドウで纏めて殲滅し、宝箱を回収していく。 ……前者はともかく、後者には美鶴が若干呆れの表情を向けていたが、その辺りは特に気にしない。 何故なら、急いでいるのは事実だが、ここはラスボス付近のダンジョンなのだ。 つまり、ラスボス……望月やニュクスに対して友好的な武器が置かれている可能性もある。 どこの世界でやったゲームだったかは忘れたが、ラスボスとの戦闘で最強の武器を使っても全くダメージを与える事が出来ず、それよりワンランク下の武器でなければダメージを与えられない……というのもあった。 まぁ、この世界でそこまで露骨な事がされるとは思っていないが、それでも効果的にダメージを与えられる武器とか、そういうのが普通にある存在は考えられる。 そんな訳で、色々とマジックアイテムを入手しているのだが……使い方の分からない物とかは、それこそ桐条グループで調査して貰わないとどうしようもないんだよな。 ともあれ、そんな風にシャドウを鎧袖一触、宝箱を纏めて入手……とやりながら進み続け…… 「おや、随分と早かったね」 階段を上ると、唐突に屋上に出て、そんな声が周囲に響く。 声のした方に視線を向けると、当然のようにそこにいるのは望月。 ただし、その表情に浮かんでいるのは純粋な驚きであり、それが演技でも何でもないのは確実だった。 「急いできたからな。もっとも、そのおかげで途中にいた門番役のジンとタカヤ……って言ってもいいかどうか分からないが、そいつらは有里達に任せてきたけど」 「ふーん。……そうなんだ」 そう言いながらも、恐らく有里を心配しているのだろうその様子は、俺の知っている望月とそう変わらない。 だが……変わらなくても、それがデスなのは間違いなく…… 「本当ならもっと色々と話したいところだけど、そうすると時間切れになってしまいそうなんだよな。だから……残念だけど、始めようか」 悲しい笑みを浮かべつつそう言うや否や、その姿が俺の知っている望月からデスとしての望月に変わる。 それを見て、俺は空間倉庫からゲイ・ボルグを取り出し……ゆかりと美鶴の2人を見る。 「頑張って」 「アクセルなら大丈夫だ」 そう言いながら、2人は戦闘の邪魔にならない場所まで離れていく。 そして、お互いに戦闘の準備が整い…… 『さぁ、始めようか』 望月ではなく、デスとしての声が周囲に響き、戦闘が始まるのだった。 |