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2017年 12月 21日 (木) 01時 39分
▼タイトル
前に考えたけど結局没った残骸
▼本文
 人は死んだら神様によってセカンドチートライフ。こうして字に表すと馬鹿な高校生が考えたような話ではある。何でも世の中には死んでもコンティニューできると本気で思っているとんでもないゲーム脳の持ち主もいるらしい。
 しかし、実際に出くわしてみると………まぁ、何だ。起きてしまったことはしょうがないなぁと納得しなければならない。あと神が尊い。少なくとも俺の事を拾ってくれた女神様は超美人で可愛くて優しかった。これからの人生で一生女神さまを崇め奉りますと言ったら「そ、そこまでしなくても……」と口元に手を当てて困ってるけど満更でもなさそうな顔で言われた。尊い。

 とにかく尊い出会いと第二の人生、イケメンフェイスとチート能力を手に入れた俺は異世界で使命を帯びて戦う事になったのである。
 曰く、神の力を物質化したフォトニウムとかいうシロモノがちょっとした事故であらゆる次元に散らばってしまったそうで、その回収に駆り出されているのが俺たちセカンドライフジャパニーズたちだという事らしい。ちなみに断れば普通に輪廻転生に戻れるのでやる気のない人は参加しなくて良い事になっている。俺は女神さまが尊過ぎて参加したけど。

 という訳で俺が得た能力は「機械化」である。他人を機械化するのではなく、全身が機械化した。ただ機械というだけならば大した事はないし生身の方が得することも増えるのだが、そこは流石チート権能。俺の体の機械化はケタが違った。

 まず、機械といいつつ実は全身が極小のナノマシンで構成されており、ナノマシンの結合具合では火山の噴火の現場にいても余裕で耐えられるぐらい硬い。動力も次元なんちゃらという永久機関だし、体もナノマシンの一粒でも残っていれば自己増殖して元に戻れる。
 慣性制御、空間転移、量子化、自己改造はお手の物。ファンネル出すのも板野的なミサイルを出すのもごんぶとビーム砲ぶっぱするのも勇者っぽい剣を振り回してエクスカリバーするのも、とにかく俺の発想次第で何でもできるスーパーパワーだ。
 エネルギー無限で自己再生出来て、ついでに余りにも高度過ぎて生体パーツと遜色ないので普通にメシ食ったり寝たりも出来る。凄いね機械。万能だね機械。俺も正直此処まで万能になるとは思っていなかったんだけど、女神さまが奮発してくれたらしい。尊い。

 で、女神様の為に全力でフォトニウムを集める旅に出たのだが………。

「いずれ天をも支配するこの妾、17代目マサツグに弓引くのかえ?愚昧めが、身の程を弁えおろう」

 最初に出くわした17代目マサツグ(女)の持っているフォトニウム製の武器に相対して、俺はやっと自分が楽観的だった事を理解した。
 このマサツグの持っている扇の「蝶ヨ舞エ」は、風を支配する武具だった。というか、風と言う概念を全て掌握するような極悪チート剣だったのだ。まず風=スピードという考えからか、この機械化チートボディでも全然追いつけないどころか移動中に全身が風と化しているので物理的に攻撃が当たらず追いつくことも出来ない。しかも風の分身を大量に作り、その分身が全部本物並みの力を持っている。風の刃や竜巻は当然あるが、空気を用いた真空爆弾で周囲ごと吹き飛ばされたり、空気の圧を使って周囲ごと大気で俺を圧し潰そうとしたり、まるで星の空気を全部敵に回してるレベルの戦闘能力だった。

 何とか地形が変わるレベルの重力波で全部分身を潰してみると、なんと最初からその場に本物はおらず、分身に喧嘩を売られて丸一日暴れまわっていたことに気付いた俺は本気で絶望した。

「……い、いや。これはアレだな。最初からラスボス級に当たったというだけなんだろう!次行ってみよう!」

 次に俺がフォトニウムを探して向かった先に居たのは、龍人だった。そいつは両手両足にフォトニウム製の籠をはめていた。正直、嫌な予感しかしなかった。

「貴様が神の遣いであろうが、そうでなかろうが、我は龍種の戦士。龍種の永劫の発展の為にしか動かぬ。そして――貴様は全身がフォトニウムであるな?そのマテリアルは希少であるが故――我が雷光に焼かれて龍種の礎となるがよい」

 はい、ダメでした。移動速度が雷で、攻撃力も雷。あの人の籠は「雷劫ヱ」といって、分かりやすく雷の擬人化だった。
 途中から電磁波やマイクロ波まで使って俺を周囲一帯丸ごと蒸し焼きにしようとしたり、雷がガドリング砲かと思う程しこたま叩きこまれたりして、しかもその出力が火山の噴火に耐える程度では全然足りず、穴だらけにされながら逃走した。
 流石に心が折れた俺は一度天界に戻って女神さまに慰めてもらった。「ダメな神様でゴメンね」と悲しい顔で逆に謝られ、女神さまにこんな顔させられんと更にやる気になってすぐに任務に戻ったけど。

 あと、天界に戻ったついでに同期の転生者たちと飲み会したけど、俺の世界がエクストラハードすぎるらしい。勤務地変えてくれって言いたいけど、神様によって勤務地決まってるらしいから逃げられなかった。
 その後も俺の前には次々とヤベー奴が溢れ出てきて……。

「始祖様の御威光たるフォトニウムを使う悪しき輩よ、我が聖剣の前に滅べぇぇぇぇーーーッ!!」

 無限増殖して文字通り全方位から刃を飛ばしてくるキチった聖職者に串刺しにされ……。

「えー?私のフープをー?どーしよっかな〜………うん、ヤダ♪」

 出会い頭に「山」をまるまる一つ落としてきたフリーダムな運び屋に亜空間へトンズラされ……。

「助力を乞うのは構わんが……力を借りたいのならば俺の氷獄を力づくで抑え込める力を示してみせろ。でなければ貴様も永遠の吹雪の中で凍えるだけだ」

 何とか話の通じる人に出会えたと思ったらこの人も問題児でナノマシンレベルで凍結されかけ……。



『フム!それでようやく倒せてフォトニウムを回収できたのがこの吾輩であったと!ふっはっはっは!まさかあの狂人聖職者や鯨の娘、玄武の契約者にまで喧嘩を売っていたとは、貴殿はまっこと愉快な男であるな!!』
「そのアンタにも殺されかけたけどな!!何そのライトセイバー!?総合出力無限大で星に一つガラスのクレーター作る熱量で危うくチリ一つ残さず滅却されるところだったぞ!!しかもそんだけ暴れておいて自分の国の革命を成功させるための目くらましで最後は勝っても負けても良かったから負けた!?つまり俺はおちょくられてただけじゃねーか!!」
『ふははは、そう言うな!貴殿との戦いは実に愉快で、最期の最期まで楽しきものだったぞ!それに結果的に革命後に吾が同志の成し遂げた新政府と繋がりを得られたのだから得たものも大きいぞ!なにせこの吾輩が命を懸けた新国家であるが故な!うわっはっはっはっはっは!!』

 マジこのおっさん殺してぇ。もう死んでて魂だけだけど殺してぇ。確かに革命軍だった結晶騎士さんがまともな味方になったのは嬉しいけど俄然納得できん。あと初めての殺人に涙を流した俺のシリアスを天界でブチ壊しているのが実に腹立たしい。

「女神様どいてそいつ殺せない!」
「ああ、リオン落ち着くのです!もう死んでますし、彼は英霊化していますから無下に追い出すことも出来ませんから!そ、それよりホラ!大きな一歩を踏み出したじゃないですかリオン!天よりその戦いを見ていましたが、見事な一騎打ちでしたよ!!」
「うう、女神様ぁ………転生者ってこんなに上手くいかないモンなんですね……!」

 俺の名は転生者リオン。
 現在54戦53敗、そして実質的な負け一つ。
 チートを超えるチートに押し潰され続けてそろそろ心が折れそうな、元日本人である。
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