のつぶやき |
2017年 07月 09日 (日) 18時 55分 ▼タイトル コロシアイは終わらない ▼本文 ニューダンガンロンパV3クリア感想の巻。ネタバレしかないので閲覧注意です。 ゲームシステムについては大体が従来のダンロン通りなんですが、個人的に偽証のシステムと議論スクラムは好きでした。偽証は打つ瞬間のドキドキする感覚が癖になりますし、議論スクラムは「一緒に戦ってくれる」という一体感があって妙に嬉しくなります。 ただ、理論武装は猛烈に苦手で最後まで苦戦しっぱなしでしたけどね……。 ストーリー。まず第一章で唐突な主人公の死が待っていますが、この辺は良く踏み切ったと思うと同時にちょっと読めてはいましたね。 理由は赤松さんがPVであまりにも希望に満ち溢れすぎた台詞を連発するものですから「この子死にそう」と勘繰るのも無理はないと思うのです。しかも体験版で登場した苗木と日向の全力の主人公押しも不自然さを醸し出していたので、ショックでしたが受け入れる準備は出来てました。 そして赤松さんに殺された(訳ではないことが後で発覚する)天海君。彼もなんとなく死ぬ気はしましたね。これまで超高校級の???はもれなく重要人物だったので、敢えて今回は重要だけど序盤に死ぬとかあるんじゃないかと思っていたらドンピシャでした。 体験版でも全然存在感がないし、序盤から意味深発言をしていたのも死にそうな感じ満載でしたからね。 そして唐突なモノクマーズ欠員。何なんだお前らは。 最後に最原くんの帽子の中から主人公特有のアンテナが出てきたところで、物語が本格的に始まったんだという感じがしました。 第二章。「まさかあの人が……」のパターンでしたが、東条さんは申し訳ないけど便利すぎるキャラだから死ぬだろうとは予想してました。性格的にもちょっと危ういと感じる部分はありましたからね。星くんの死は普通に予想してなかったのでショックでしたけど。 でも東条さんの死に様は処刑されたクロの中でもかなり印象に残っています。シリーズ内でも一番生き汚かったですが、それが逆に彼女の魅力だとも思えます。 ただし春川さんのフリーズバグは許さねぇ。修正されたけど。 第三章。学校内での派閥発生と死者の甦りに端を発したこの事件は、面白いけどやりごたえとしてはそこまで意外性はなかったですね。ここでプレイヤーの内心が王馬くんと重なるのは、スタッフが狙ったことなのでしょうか。 アンジーはともかく茶柱さんの死は結構堪えました。百田と一緒に序盤から明確に最原くんの味方側でいてくれる人だったし、結構心の支えになってた人もいるんじゃないでしょうか。当人は男嫌いだけど。 真宮寺くんは、人殺しでなければ面白い話を聞かせてくれて普通にいい友達になれそうな塩梅が絶妙でしたね。敢えて欲を言うならば、彼はもっと逆転裁判の犯人ばりに全力で抵抗しまくった方がもっとキャラが立った気がします。 ついでに夢野ちゃんがこの辺から個人的にいとおしくなってきました。あの「んあー!」が非常に可愛らしい。思考が茶柱化してしまった……。 第四章。これまた意外性があったり「新世界プログラム」が登場したり唐突なモノタロウの援護があったりと色々ありますが、これは三章以上に意外性に欠ける内容でした。ただ、ここでも私の心理と王馬くんの態度が微妙にシンクロする感じがあって、急激に王馬くんというキャラに対する興味が増大していきます。 入間さん死亡。うーん、最後まで自己中な人でした。後の紅鮭団をやってみるに、人との信頼関係の築き方が極端にヘタクソであるが故に逆に自分の殻に閉じこもるという猛烈に面倒くさいタイプだったような気がします。彼女の全力下ネタの嵐はどうにかなんなかったのでしょうか。 そして唐突なゴン太の死。これまでダンロンの筋肉キャラは死ぬというジンクスがありましたが、ゴン太ならもしかしたら……!という期待は打ち砕かれちゃいました。 そしてなぜかモノクマーズ全滅。お前らは本当に何なんだ。 第五章。 ここから物語は急展開を迎えます。なんと王馬くんが自分こそコロシアイの首謀者だと主張して皆を絶望に叩き落とす!……のですが、まぁモノクマと繋がっていなさそうなのは読める部分なのですが、それにしてもコロシアイの主導権をモノクマから横取りするとは恐ろしい奴です。 この恐ろしさはダンロン2の狛枝に匹敵するかそれ以上のインパクトがありましたね。 そして明かされるストーリーの全容。すべては繋がっていたんだ!……そうか、ゴフェル計画の名前が出てきたあたりで大体想像できる内容だったけど、もう苗木くんたちも過去の人になってたんだね……と思いつつ、「なんか違和感あるな」という言葉に言い表しづらいしこりみたいなものはありました。 「こんなに安直でいいの?」という思いと「これからどうストーリーを続けるの?」という不安。それを抱えたままの事件発生。 個人的にこの章がダンロンV3のピークじゃないかと思う程に良かったです。モノクマすら犯人が分からなくなるほぼ完ぺきな計画に、王馬くんの総統としての意地を見ましたね。彼の「無理矢理やらされるゲームが楽しい訳ないだろ」というセリフは、きっと本音だと私は思っています。 そして最終章たる六章。ここで唐突なキーボくんの暴走と乱闘が開始してさあ大変。なるほど、プロローグで廊下をうろついていたエグイサルの真相はこれか……。などと考えつつ、これまで行けなかった場所を徹底捜索。途中で姿を現す隠れモノクマと天海くんの研究室の謎二時間を取られて一回ゲームオーバーになりました。不覚……。 そしてついに明かされる真実と、驚愕の展開。 実際にプレイした人たちの中にはこの終盤の展開が気に入らない、ふざけるなという意見もたくさんあったらしいですが、私は「これをやってこそのダンガンロンパだよ」という満足感がありましたね。ここまでやってくれないとこっちも満足できないよ、という嬉しささえありました。 ダンガンロンパシリーズはこれまで、ラストに全部の前提をひっくり返すようなトンでもない展開が待っているのが定番でした。しかしダンロン2以降、外伝やアニメで様々な世界の全貌が明らかになっていく中で、ゲームの方の3でどんな展開を出しても初代から地続きの世界観であるが故の限界というものが生まれます。これは続編が出続けるゲームの宿命とも言えるでしょう。 しかもスタッフとしても旧作に対する思い入れや愛はありますし、彼らが看板になっているからシリーズが続いて来たという事実がある。だから多少自由度が下がって少しずつビックリ感が失われても、大抵のゲームはそのままシリーズを存続させる中での限界を模索します。 しかし、ダンロンスタッフはやりました。とうとうやっちまいました。「過去作の前提を粉々に吹き飛ばす」という荒業で、自分たちの積み上げたものを自ら叩き壊すという大胆な方法で、スタッフはダンガンロンパの限界を超えたのです。 確かに旧作ファンたちはふざけるなと思うかもしれませんが、これはクリエイターとしては凄いことなのです。何故ならクリエイターとは必ず自分の作った世界に縛られる部分が出るし、自分の作った、世間に評価された完成品を自ら否定するというのはとても勇気のいる事なのです。これは、やろうと思って簡単に出来る事ではない、ダンガンロンパにのみ許された展開なんです。積み上げてきたからこそ叩き壊すことが出来たんです。正直私はこの展開に感動しました。 そしてかつて自分たちと共に戦ったりしてきた旧作の仲間たちからの嵐のような否定と、ダンロンプレイヤーそのものが持つ「自分の認めたくない嫌な部分」を容赦なく醜い形で叩きつけてくる胸糞の悪い展開。さらにはキャラクターの成り立ちそのものさえ嘘にしてしまう、ダンロン史上最も精神的にキツイ展開まで用意して徹底的にキャラクターを叩き潰しに来ます。 挙句、これまでプレイヤーが心の拠り所にしたであろう「希望」さえ嘘にする恐ろしさ。希望と絶望は表裏一体、だからダンガンロンパは続く。ゲームのジレンマ。ダンガンロンパのジレンマ。そしてその内容はどこかアニメのダンガンロンパ3での未来機関同士の争いを思い出させます。 このプレイヤーに対する皮肉のような言葉はしかし、どこか的を射ているからこそ認めたくない人にはものすごく嫌われたんでしょうね。でも、そこで怒った人やダンロンV3を叩いた人はスタッフに乗せられているだけです。 そして叩かれに叩かれ抜いた末に最原くんの選んだ道――「ダンガンロンパを終わらせる」。 例えキャラクターの台詞だとしても、これを言わせるのはやはり凄いと思います。 特にキーボの台詞である「フィクションの力を信じていないんですか?」は、ちょっと鳥肌が立ちました。今までキャラたちを俯瞰していたプレイヤーが気が付いたらキャラに見下ろされているような感覚。なんというか、物語のキャラに「負かされた」感じがして、それが何故か嬉しかったです。 そして決着……エピローグ。 結局あの世界は何だったの?どこまでが嘘でどこまでが本当だったの?様々な謎を残してニューダンガンロンパV3は幕を下ろしました。 一部ではこのどっちつかずな設定に不満をあらわにする人も多いそうですが、そういう人はちょっとわかってないなぁ、と思います。 これはスタッフの、本当の本気でダンガンロンパが好きな人に対する優しさだと私は思っています。真実を明かさないことによって、旧作ファンは旧作に沿った、今作ファンは今作に沿った「その後」を想像出来る余地を態々残してくれているんです。ちなみに私的な想像では、少なくともあのゲームに登場した数多の「視聴者」は実在するものだと思います。それ以外は……好きに想像していいっていうんだから、好きに想像しましょう。 ここまでやったのならば、もう続編が出なくとも全然かまいません。それぐらいにスタッフは全力で、ダンガンロンパを終わらせたと思います。 |