のつぶやき |
2016年 10月 23日 (日) 00時 41分 ▼タイトル 異世界トリップってつまりこういうことだよね ▼本文 死にたいと思ったことは、誰にだってあるかもしれない。 問題はそこから本当に死へ向かう勇気があるかどうか。 それが自殺者と惰性に生きる人間の違い。 靴を脱ぎ、マンション屋上の柵を越えてコンクリートの淵に裸足の足先が触れる。 風が頬を撫ぜ、髪がはためくいて視界を遮る。 これから死ぬというのに恐怖は覚えなかった。 元より自分で決めた道なのだから。 別に、死のうと思う理由は一つだけじゃないし、突発的なものでもない。 ただ、理由が一つ、二つ、三つと枯葉のように積み重なった。 それがいつの間にか自殺に足る量となっていただけだった。 父親に相談しようとは思わなかった。だって父親も理由だから。 母親に相談しようとは思わなかった。だって母親も理由だから。 教師に相談しようとは思わなかった。だって教師も理由だから。 友達に相談しようとは思わなかった。だって友達も理由だから。 だけど行き場のない感情は膨らみ続け、心を少しずつ蝕んでいく。 ぶつける相手も逃げ込む場所も見つからない。 そうするうちに段々と考えることさえ億劫になってゆく。 最期に頭の中で一番輝いている非常口のランプは、死という名の脱出口だった。 体をゆっくりと、ゆっくりと、夜の闇を必死で振り払おうとする外灯に照らされた方へ。 高さ20メートルを越えた四角い牢獄から、天国の門に化ける分厚いコンクリートの一枚板へ。 体が重力に従い、スローモーションの世界を駆け抜けるように落下していった。 わたしがわたしから解放されるまで、あと少し。 痛いのは一瞬で、後に残るのは永遠。 これで――。 わたしは――。 ―――。 ―――。 ぐぎゃり、と。 自分の首の骨がへし折れる音がした。 『冥府の女神よ、彼の者の瞬きを現世へと呼び戻せ!――『リバイバル』ッ!!』 ぱちり、と目が開いた。 首の後ろにズキズキとした痛みが走り、体はとても硬くてゴツゴツした場所に投げ出されている。 直後、けほっ、と喉から空気が漏れて、自分の呼吸が続いていることに気付かされる。 咄嗟に後ろを振り返ったら、自分が飛び降りたマンションが興味なさげに私を見下ろしていた。 外灯は相も変わらず臆病に暗闇を乏しい光で満たそうとする。 通行人に無関心な車たちは自分の車線だけ見つめて排気ガスを吐き出し続ける。 わたしの世界は、何一つとして変わっていなかった。 なんで、どうして。 20メートルの高さから地面に叩きつけられた程度では、この華奢な体すら壊せないというのか。 困惑ばかりが頭をぐるぐると駆け回るなか、わたしを見ている人間がいることにふと気付く。 その男は――。 「大丈夫かい?いや、びっくりしたよ。古代都市の地下遺跡にまさか人が住んでて、しかもこんなに文明が栄えていたなんて思いもしなかったのもびっくりだけど……建物から急に落ちてくる人がいるんだもん!暇な時間に覚えておいた回復魔法で怪我は治しておいたんだけど、どうかな?」 その男は、額当てを装備し、ガントレットと軽そうなレザーの服と気障なブーツを履いて。 腰に古めかしい革のポーチとRPGの勇者が持つような剣をベルトからぶら下げ。 マントをはためかせ、目に痛いごてごてとした指輪やリングを手に嵌めて。 目に痛い黄緑色の頭髪を揺らし、橙色の瞳でわたしを心配そうに見下ろしていた。 「……………………」 「どう、かな?」 「……………………コスプレの人?」 「こすぷれって言葉の意味は分からないけど、多分違うよ。だって俺は――!!」 彼の者、誰よりも眩い勇気の刃で深淵の闇を切り裂き、世界に光を齎せし希望。 人は彼を――勇者と呼んだ!! 「ふざけてんの?」 「えっ」 「いや、なんで町の中を勇者コスプレで歩いてるの?恥知らずなの?親に恥ずかしくないの?」 「いやいや、だって俺本当に勇者だったんだって、本当に!!」 「それって誰がどうやってなるの?職業名鑑に載ってる?給料は誰が払うの?お母さん?」 「母親にたかったりするかいっ!!勇者云々はそういう家系だからしょうがなかったの!!」 「お父さんもそんななんだ。ふーん。親がそんなで恥ずかしくなかったの?」 「お願いだから俺の話を聞いてくれよぉぉぉーーーーッ!!」 盛大に自殺の邪魔をした不審者が本当に人知を超えた力を持つ『異邦人』だと気付くまで、あと8時間。 ※改めて読み直して微妙にシチュエーションが曖昧だったので追記したり。 |
2016年 10月 23日 (日) 21時 18分 海戦型 ▼タイトル 異世界トリップってつまりこういうことだよね ▼本文(冒頭20文字) 死ぬと人の魂や意識は別の世界に旅立つとい... |
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2016年 10月 23日 (日) 19時 52分 aki eco ▼タイトル 異世界トリップってつまりこういうことだよね ▼本文(冒頭20文字) 駅に入ってきた電車に飛び込んで、消えた女... |
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