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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜(兵部省の小役人)

メリトクラシーを騙る専制主義国家であるゴールデンバウム朝銀河帝国に対抗し、人類の生存圏を二分する自由民主主義共和国家の自由惑星同盟。
その生い立ちは、その名の通り独立した国家群による国家間の経済・治安の互助を目的とした条約にあった。
 やがて、それは強力な軍閥連合である貴族と皇帝が送り込む侵略軍に対抗する為、国家と国民の主権擁護の為の軍事条約機構となり、戦時下の必要性に応じ、自由主義と民主主義――それについても多様な解釈があるが――により事実上の連邦国家が形成されるに至った。
 だがそれは同盟を構成する共和国の主権を否定するものではない。自由惑星同盟の歴史において主義主張に関わらず最高評議会の最大抵抗勢力として上院が立ちはだかった事がその証明である。
 上院は下院よりも歴史が古く正式名称はGeneral Assembly of the Aliance Commissioners……同盟弁務官総会である。
 彼らは同盟憲章制定の為の加盟共和国利益代表者たちの集まりとして産まれ。その性質上、彼らは【同盟の民意】ではなく【加盟共和国の利益】の代表であった。常に戦時下において増長する中央政府と地方政府間の闘争を行ってきた。辺境を盾にしたバーラト・エリートの嘯く【距離の防壁】論への猛抗議を辺境星系の議員達が行い。国粋主義に対してフェザーン航路星系の亡命者二世が異議を唱え。国境への無制限の軍事費の出費負担に中枢都市星系が反発した。
 上院が常に一致団結するのは構成国の権利への侵害のみであり、それ以外については選挙でどれほど特定の党派が大勝しようとも、意見が一致したことはなかった。
 彼らは加盟国民より公選された議員であるのと同時に外交官でもあり、党派以上に地域主義の伝統に対し忠誠を誓っているからだ。
 【共和国の外交官】達は長い戦争の合間に訪れた政治の季節に向け、動き始めていた――

※この小説はらいとすたっふルール2015年改訂版に従って作成しています。
即ちその二次的著作物が特定の宗教・思想あるいは政治団体の宣伝もしくはそれらへの批判を目的としたものではない点を強調させていただきます。
※ハーメルン〜小説投稿サイト〜様にも掲載させていただいております。



或る皇国将校の回想録(兵部省の小役人)

 人と天龍達が暮らす〈大協約〉世界。その片隅で〈皇国〉は内紛の諸将時代を終わらせ、四半世紀の太平の世を謳歌していた。
 <皇国>の実権を握る貴族連合、五将家は太平の世の中で徐々に衰えつつあった。
 五将家の雄である駒州公爵・駒城家の重臣、馬堂家にて生を受けた馬堂豊久は“地球”の記憶をおぼろに抱えながらもその太平の世を謳歌する一人であった。
 皇紀五百六十八年、〈大協約〉世界最強の軍事大国〈帝国〉は蛮族鎮定を掲げ、〈皇国〉最北の領土、北領に対し侵攻を開始し、平穏は失われる。
 後に〈皇国〉本土決戦と呼ばれる大戦、故国に築かれた前線で、銃後の政争で、〈皇国〉将校達は各々の信ずるものと護るべきモノの為に駆けずり回る事になる――
 
 



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