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『銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(旧版)』への感想

投稿者:月の光
[2014年 09月 14日 06時 54分]

▼一言
クーデターを恐れたソヴィエト独裁の粛軍人事と実際にクーデターが起きた民主共和の同盟の粛軍人事では、政治的信頼度を何よりも優先する姿勢など似たような雰囲気になってきましたが、粛清の結果による一つの到達点である教条主義までは至っていないようですし、ソヴィエト独裁の苛烈な粛清に同盟は及びません。
クーデター後の粛軍としては史実の各国の事例をみても至極当たり前の人事の範囲であって、運用に難が起きるとわかっていてもやらなければしょうがない政府の判断は理解できます。
ソヴィエトよりも粛軍がマイルドなので軍の弱体化もマイルドみたいですが、それもソヴィエトと比較すればであって、エリヤの組織運営の手腕がどのように発揮されるかが楽しみでもあります。

ヤンの処遇は原作に沿ってこの後召還がされるのかどうかひとつの山場ですが、今作では罷免されるかぎりぎりの事を司令官権限でしているので、イゼルローン防衛に良い悪いは別として召還されても仕方ないような気もします。
同盟はヤン旗下の自由主義を尊ぶが民主共和制から離れ始めた人々と、その他大多数の民主共和制を信奉するが、自由主義から離れた又は非常時の大権一時授与も仕方ないと思うような人々に分かれ始めましたね。
ヤン旗下は同盟から独立すれば自由主義を尊ぶ一つの民主共和制の国としての思想は成立するでしょうが、
現状では自由主義を尊ぶあまり、自分の思想と違うなら多数派の意見は無視するのは一人の国民としては良いですが、民主共和制の官職にある立場の人間の取って良い判断ではありません。
その行動は民主選挙による国民の意思の反映を無視する事ですから、民主共和制の否定に繋がっています。
その矛盾を彼自身はどう整合を取っているのか、
原作でもその辺に触れていて民主政府の判断に従うとしていますが、それは停戦命令とかクーデターを起こさないという根本の所だけであって、ヤンのしている政府から繋がる正当な命令系統を無視・軽視する事は現実の世界の軍の常識では懲戒戒告、罷免、降格、予備役にされてもおかしくありません。
司令官の独立権限の範囲内とするには少し逸脱しています。

ヤンは言ってる事と違い、やってる事は本当に貴族的なんですよね。



▼返信
投稿者: 甘蜜柑
[2014年 09月 21日 (日) 19時 08分 40秒]

市民が支持しているという時点で、それなりの理解が得られるものであるのは確かですね。帝国領遠征後の粛軍の不徹底が残した禍根の大きさを思えば、他に方法はなかったと思います。

ヤンとトリューニヒトの戦いは、おっしゃる通り自由主義(個人主義)と国家主義(全体主義)の戦いです。自由主義と民主主義は必ずしも一致するものではなく、国家主義と民主主義は必ずしも対立するものではない。実のところ、専制政治と民主政治の対立より、自由主義と全体主義の対立の方がより尖鋭的であると私は思います。

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