『銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(旧版)』への感想
投稿者:不来庵
[2014年 09月 04日 23時 58分]
▼一言
自由惑星同盟も、勲章の大安売りが始まったようですな(元ネタ:吉岡平『宇宙一の無責任男』)
英雄エリヤ・フィリップス中将の処遇は結構難しいような。
第十一艦隊司令官、というわけにはすんなり行かない(戦術能力にははっきり疑問符がつくレベルですし)でしょうし、後方系だとポストによっては市民感情的にどうかなというところでしょうか。
……ヨブ氏の呼び出し、その辺考え合わせて政界転身を勧めるため(30直前のイケメンで、文字通り市民と共に戦った存在ですから、ハイネセンのどの選挙区から出馬してもほぼ当選確実でしょう)、とか……は、さすがにないか。
クリスチアン大佐は原作通り(階級剥奪まで考えると原作以上かも)の汚名を残すことになりましたね。
原作だと「最初から穏やかに諭す気などなかった」云々(記憶違いご容赦)とか、ろくでもない描写でしたが、結構ジェシカ女史の方も売る気マイナスな喧嘩でも札束で頬を叩いて買うつもりなくらいに挑発的でしたしねぇ。
フッ化水素酸に金属セシウムを投げ込む勢いで爆発したんじゃないかと……
ただ、ジェシカ女史が国葬だと、後のエドワーズ委員会って成立するのか?と、ちょっと疑問になってみたり。彼女は本作でも反戦平和派のシンボルには違いないと思うんですが、国葬によって微妙にトリューニヒト政権との関係が近くなる分、反戦平和派からの神格化度合いは薄くなるような気が。
更に言えば、原作ではハイネセン現地でクーデターに対して立ち向かったのはジェシカ女史ら反戦平和派だけでしたが、本作だと英雄エリヤが存在する分、彼女の影は薄くなる道理ですし。
ルイス中将案って、確か原作のヤンが内乱/クーデター前にイゼルローン要塞で暇していたときに構想していたプランと大同小異な案ですね。
ただ本作世界で実行した場合、盛大なゲリラ/パルチザン/レジスタンス祭りになりそうな気が。
蛇足:
銀英伝世界の場合、やはり恒星間空間は同盟直轄領域とかの名目は形式的にあっても、航行上の要所に相当する一部の宙域を除いてろくすっぽ管理されてないんじゃないかと……
でないとレーダー透過装置の存在を考慮しても、海賊の存在や、バーミリオン会戦で双璧の艦隊が同盟軍に気付かれずにハイネセン上空まで進入できたりする理由が説明つかないです(いかに末期状態とは言え、首都星系及び近隣星系の監視網がそこまで落ちているとは考えにくい)。
……と言うわけで、ヤンが通過予定星系と目される星系に根回ししていない理由の一端はこのあたり(いずれかの星系の管轄範囲内に入らずとも反乱星系まで到達できる)にあるんじゃないかと。
(無論、同盟領内は厳密に隙間なくいずこかの星系政府の管轄下にある、としてもよいのですが、現在の海洋関連の国際法の延長線上に銀河連邦時代以降の星間法があるとすると、慣習的に惑星・恒星の影響圏外かつレーダーや重力波探知機(銀英伝世界ではワープアウト時に重力震が発生します)その他で実際に監視・管理できない領域には実効性のある管轄権が発生しないんじゃないか、というのが私見。小生の見解のごとく宇宙空間を海洋とみるか(広大な公海=無管制区域が存在)、それとも航空管制(こちらは全世界隙間なく区切られていますが人工衛星のアシスト必須=強力な超光速リアルタイムレーダーが必要)のイメージか、によって見解が変わるところではありますが、銀英伝のスケール描写って良く言って矛盾の塊なので、どちらをとっても辻褄の合わない部分が……)
投稿者:
甘蜜柑
[2014年 09月 06日 (日) 02時 10分 52秒]
おっしゃる通り、エリヤの処遇は難しいですね。クーデター鎮圧で示した力量は、平時では活かしにくいですし。
トリューニヒトのやり口をジェシカの支持者すべてが歓迎するかどうかが問題でしょう。国葬で喜ぶ人ばかりとは限りません。
ルイス案は帝国内戦のシュターデン案みたいなものです。
本作では「航路に使える宙域は全部どこかの星系の管轄下にある」ということにしています。バーミリオンの頃には、航路保安部隊が活動停止していたのでしょう。
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