『亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)』への感想
投稿者:tukiyomi
[2014年 06月 25日 23時 11分]
▼一言
更新お疲れ様です。
今話を見る限り、ヤンとココアさんの本心からの和解は絶望的になったかもなあと。
何故かというと、ヤンのココアさんに対する不安感が、ヤンの罪悪感から発しているものと見られるから。
作中ヤンは、フレデリカに自らの行動がココアを追い詰めてしまったことを懺悔している訳ですけど、同時にそれはココアさんの罪悪感に自らが押しつぶされかかっている表れでもないのかなあと。
これまでヤンはワイドボーンから幾度もダメ出しを受けてきた訳ですけど、そのたびごとにヤンは自らの言動が周囲からどう見られているのか突きつけられるわけで。
しかも当のココアさんからは「きれいごとばっかり言っているが、人に汚れ役押し付けているだけじゃねーか」と、叩き込まれてもいる訳ですから、そりゃ内心のストレスはとんでもないことに。
そこら辺考えた場合、自らの行動や言動がココアさんを人間不信に追いやる要因になったという事実が、ヤンに相当の罪悪感を感じさせ、そして本来ならそうした状況を改善しようにも、その事実の大きさに二の足が踏めず、結果何のかんのと自己肯定できる理由を作っていくうちに、何時しかそれが自分のココアさん評になっていったんではないかなあと。
それにしても、やむを得なかったとはいえ、サアヤとフレデリカの配慮って、状況の悪化を固定化していないかと。
普通、ゲストが行きと帰りの座乗艦を替えるなんてめったにない事ですし、しかもココアさんとの会食では口論をし、ホアンとの会食では和気あいあいとしているとか、二人が不仲だと肯定するもんですよ。
しかも、フレデリカは参謀長たちに「ヴァレンシュタイン委員長はその事を気にしていない事、むしろ大人げない事をしたと謝罪された」と説明した訳ですが、これが広まった場合、ココアさんはヤンに配慮していることが丸わかりですので、ヤンがココアさんを嫌っていると判断されることに繋がります。
そこら辺考えると、ヤンにとって今回の配慮はマイナス以外の何物でもないんですよ。ホスト役の人間が、自分の嫌いな人間と喧嘩をし、挙句の果てには帰りの船を交代させることになり、新しく来た人間とは楽しく談笑する。
とてもではないですけどホスト役としては問題外でしょう。
客人が誰の目にもわかるようなよほどの非礼を勝手にしでかしたのならばともかく、少なくとも客人はホストに対してそれなりの配慮はしている。
ヤン自身は気にしないでしょうし、フレデリカ達はこれ以上の破局を望まなかったのでしょうが、司令官職というものは艦隊運用だけではなく、色々な政治的判断も担わされる存在であること考えると、上層部の評価は結構辛めになってくるんじゃないでしょうかねえ。戦時向けの人間だとして。
ホアンのココアさんの影響力評ですが、これはあまりに甘いでしょう。
若くて亡命者でありますけど、でも10年〜20年立てば、若さをどうこう言う人間は減るでしょうし、亡命者という出自も「平和を構築した功績者」という評価にどれだけの影響力があるか。
第一、ココアさんは人類史上でも類を見ない完勝を何度も打ち立てている常勝提督。ココアさんに直接率いられた部下たちはそれを誇りにするでしょうし、その巨大な武勲は原作ラインハルトでもあったように強烈なまでの崇拝を生み出しかねない。
しかも帝国との和平を維持するには、帝国との交渉が必要で、交渉を成功させるためのパイプ役として、まず帝国側が必要視する。
私が同盟指導者だったらその処遇に頭抱えたくなりますよ。
軍部にも外交にも影響力ありすぎ、しかも私生活は清廉潔白であるので、スキャンダルで自滅する可能性は殆どなく、その高潔な姿勢とルックスや弁説は、大衆の人気を得やすくなる。
扱い間違えれば大爆発起こしかねない核爆弾級の存在ですよ。しかも当人にその自覚がないというおまけつき。
そう考えると、美しい夢のポジションって、政府上層部から一番安心のおけるポジションに据えられたんだなあ。亡命編のココアさんは、本編でリヒテンラーデ侯爵が言及した、「力量ある人物が地位を得ぬ」という中でも最悪の状況でもある訳ですし。
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