暁 〜小説投稿サイト〜
感想詳細
『亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)』への感想

投稿者:[非会員]の感想
[2014年 06月 11日 21時 53分]

▼一言
 ココア閣下がルドルフについて言った事を、より詳しく言い直せば、以下のようなことになるのではないでしょうか。

 ルドルフが理想としたのは、「賢明な人間によってのみ、動かされる社会」だった。賢明な人間がすべてを定め、愚かな人間は、黙ってそれに従う。そういう社会だった。
 おそらく、彼にとって、愚かな人間には、労働力としての価値しか無かった。いや、その価値しか見出せなかったのであろう。

 ルドルフは、「愚かなくせに、政治に口を出したがる人間」や、「自助努力をせず、助けてもらうことを望むばかりの人間」を憎んだ。
 彼の主観では、そのような人間は、社会にとって、百害あって一利なしだった。抹殺されて当然、社会から排除されて当然だった。

 知的障害者や身体障害者を嫌ったのも、おそらく同じ理由であろう。
 ルドルフにとって、「社会に何の貢献もせず、他人の重荷になるばかりの人間」などは、存在そのものが悪だったのだから。生きていること自体が罪で、許されないことだったのだから。

 おそらくルドルフも、『賢明な人間が少しでも増え、愚かな人間が少しでも減る』ことを望んでいたのは、民主主義の信望者たちと変わりが無い。しかし彼は、自らの理想に酔ってしまった。自分自身に酔ってしまった。

 ルドルフは、現実を見失った。民主共和政の理想が完全には実現不可能なのと同じく、彼の理想も完全には実現し得ないものであること、少なくとも、長続きはしないものであることを、忘れてしまったか無視してしまった。

「劣悪遺伝子排除法」を作った時、彼はこう思っていたのではないか。「これで、社会にとって有害無益な人間がいなくなる」と。そして、「これで、少しは賢明な人間が増える、愚かな人間が減る」と。



感想一覧へ戻る

[0]小説案内ページへ戻る

TOPに戻る

暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ