『銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(旧版)』への感想
投稿者:tukiyomi
[2014年 05月 05日 20時 16分]
▼一言
更新お疲れ様です。
史実同様イゼルローン要塞は陥落。
ある意味同盟にとっての運命の分岐点に近づいてきました。
しかしここでシトレ主導により要塞陥落を成し得た事で、政治的に追い詰められていたシトレの権威は、これまでの失態を吹き飛ばすほどの高まりを見せたのに対し、勢いのあるトリューニヒト派はともかく、ロボス派の命運は完全に尽きたとしか。
そりゃあロボスが派閥の復権をかけて一か八かの賭けに出るのは心情的にあり得ますし、そしてそれがわかっている分、フォークも何としても出兵で功績を立てないといけない。
そしてシトレ派はそれがわかっているから最初から最後まで非協力的。原作ではロボスの戦略目的のあいまいさが同盟大敗の要因となりましたけど、仮に戦略目的がはっきりしたとしても、どこまで司令部が艦隊にフリーハンド得られるかが未知数なんですよねえ。
エリヤ司令部は比較的上手くいっていますが、懸念要因もちらほらと。
カプラン大尉は問題外ですが、副司令官との関係は一歩間違えれば用兵上のトラブルを引き起こしますし、コレット大尉も注意しないとハバロフ大尉の二の舞になりますし。世間慣れしているチュン大佐がいたのは本当に大きいです。
帝国軍の結束力の問題ですが、門閥貴族とその他の図式は良く指摘されますが、下級貴族と平民、そして平民の間での対立要因にまで切り込んだのは斬新ですね。
原作読むと、メルカッツ提督が下級兵士達との交流を通じて自分の間違いに気づいたり、貧乏貴族であるラインハルトが、遂に平民の価値観を理解しなかったことを考えると、さもありなんと言える訳ですが。
エリヤへの風当たりの強さですが、ここら辺はシトレ派、特に第11艦隊を追い出された面々が盛んに言っているでしょうね。
彼らにしてみれば、たかが副官如きに進言の邪魔をされた挙句、結果的には司令官を立ち直らせ、功績を立てさせたわけですから、面目丸潰れでしょうし。
まあエリヤ以上に面倒なのはヤンでしょうけど。
最後に、作者コメに「ヤンの政治力は意外と高い」とありますが、これそんなに高くないと思いますよ。
フィッシャー提督の事例を挙げていますけど、あれは第4艦隊と第6艦隊を統合することで半個艦隊を急遽作成することになりましたので、人事上の異動を最小限にする必要性の方が大きいのではないかと。
むしろメルカッツを引き抜かれたように、後半になればなるほど、後盾のシトレ派の権威低下と共にトリューニヒト派の介入招いていますし。(査問会は、ヤンの自業自得な点もありますが、前線指揮官を引き抜いたという時点で、トリューニヒト派の強さが見て取れます)
ヤンの政治力というよりは、シトレの影響力と言った方がいいのではないかと。
投稿者:
甘蜜柑
[2014年 05月 07日 (日) 01時 38分 30秒]
勝ち過ぎると後が怖いというのは、去年のテロリストとサンフォードが実証していますね。
組織なんてうまくいかないのが普通です。多少は不安要因があったほうが緊張感があって、いい運営ができますよ。
ラインハルトとその配下は全然庶民的じゃないんですよね。彼らはエリートの価値観を持っています。門閥貴族は許しがたい無能に見えて、庶民は導くべき存在に見える。そんなエリートですね。
エリヤへの風当たりは、力がそこそこある人の間で強いんじゃないでしょうか。努力すればエリヤの地位が手に届く場所にある人、あるいはエリヤより苦労して同じ地位を手に入れた人など。どの派閥にも敵がいそうです。
>最後に、作者コメに「ヤンの政治力は意外と高い」とありますが、これそんなに高くないと思いますよ。
> フィッシャー提督の事例を挙げていますけど、あれは第4艦隊と第6艦隊を統合することで半個艦隊を急遽作成することになりましたので、人事上の異動を最小限にする必要性の方が大きいのではないかと。
第四艦隊で生き残った提督がフィッシャーだけとは限りませんよ。何人かの生き残った戦隊指揮官の中から選んだんじゃないでしょうか。定数を大きく割り込んだのに指揮官だけが生き残った戦隊、戦力は相当残っているけどヤンが求めるような能力がない指揮官の率いる戦隊もあったでしょうから、それらの部隊をフィッシャーの指揮のもとに集めるのは難しいです。
>むしろメルカッツを引き抜かれたように、後半になればなるほど、後盾のシトレ派の権威低下と共にトリューニヒト派の介入招いていますし。(査問会は、ヤンの自業自得な点もありますが、前線指揮官を引き抜いたという時点で、トリューニヒト派の強さが見て取れます)
当時のメルカッツは顧問です。前線指揮官ではありません。要塞対要塞では一時的に指揮権を預かっただけです。率いるべき部隊も持つ指揮官でなければ、分担すべき仕事を持つ参謀でもない。必要に応じて諮問を受けて、職務を代行する顧問であれば、動かすのは容易でしょう。
ヤンを恐れていながら、フィッシャーやアッテンボローといった部隊指揮官、ムライやキャゼルヌやパトリチェフといった参謀に指一本触れられなかったというのは、かなり重大な事態ですよ。
あと、査問会に関しては、むしろヤンの政治力の絶大さを示している逸話だと私は考えます。ヤン艦隊の参謀チームや部隊指揮官にトリューニヒト派を送り込んで監視することもできなければ、合法的にヤンを解任することもできない。部隊から引き離した後に、法的に認められない嫌がらせで自ら辞表を書くように仕向けなければならなかった。(実際、ヤンは辞表書く寸前でした)
追い込まれてたのはトリューニヒト政権の方だったと思います。クーデターの幻影に怯えて、バレたら政権要人の首が飛ぶようなスレスレの行動に出たのではないでしょうか。
>ヤンの政治力というよりは、シトレの影響力と言った方がいいのではないかと。
シトレと近いビュコックやクブルスリーは、トリューニヒト派に政治的な劣勢に立たされていたようです。シトレの残光はあまり残っていなかったのではないでしょうか。
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