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『錬金の勇者』への感想

投稿者:禍原
[2014年 02月 24日 21時 14分]

▼良い点
一話一話、情景描写が細かく書かれていて読者がイメージしやすい文章でした。それに段落での改行だけではなく、強調したい場所にも改行を入れていることで、読みやすさもあります。

個人的な意見ですが、文体としてはほぼ文句なしだと思います。
読みやすい書き方をなされているのでスラスラと読むことが出来ました。

▼悪い点
《錬金術》スキルが最強過ぎるw

▼一言
初めまして。禍原と申します。

最新話まで読了したので感想を書かせて頂きました。
個人的な独断と偏見に基づいただらだらと長い感想となっていますので、ご気分を害されたら申し訳ありません。
というか、今回結構キツイ内容となっているので、なんでしたら無視されてもかまいません。

現実世界に実在する錬金術師、彼の者をSAOの仮想世界へ誘う茅場明彦。
茅場さんは異質な者――自分の造り出した世界で紡がれる物語をより面白そうにしてくれる者を好む傾向にあったと思います。
なのであのような誘い方をするのも違和感は少なかったですね。

しかし、仮想世界(プログラムによって造り出されたシステムにより運営される出来ることが限られた世界)に、実際に錬金術を使える人をただログインさせただけなのが、どうして《自分の造った世界と本物の魔術の融合》に繋がるのか。《錬金術スキル》という《システムによって定められたスキル》を与えるのならば、別に錬金術師に与える必要はなかったのでは? とかは思いましたね。

以下は各話を読んで気になった点です。

■プロローグ

プロローグの塔型ダンジョンにて主人公のスキル内容に以下の疑問。
・相手の武器を奪うスキル?
 モンスターの持つ武器を奪う。それは同時に相手にソードスキルはおろか、攻撃手段さえも奪うという意味も持つでしょう。錬金術スキルよりも此方の方が凶悪だと思いましたねw
・《等価交換》で造り出した剣は浮きながら創造主の思う通りに動く?
 それともこれは錬金術のスキルとは関係ない別のスキルの力なのでしょうか? 主人公が手のひらをかざすと幾本もの剣が敵に突き刺さる光景を想像してしまう……もはや魔法ですね。
・如何に強力な剣でも、ソードスキルなしにボスモンスターが一撃で破られるのか?
極端にいえば、《レベル1のプレイヤーにレベル50相当の剣を持たせて通常攻撃一発でイルファング・ザ・コボルトロードを倒す》ようなものですよね? 数値が絶対のゲーム内だからこそそんな不可能が出来るのかもしれないですが、逆にそんな上位レベルの剣を扱うことが出来るのかという問題も出てきますね。

■2『錬金術』

・《等価交換》のルビがちゃんと振れていない場所がいくつかありました。

・《等価交換》の法則について疑問。
 ・『一つの物質をそれと全く同質の別の物質に置き換える』とありますが、ここが少し曖昧な説明に感じました。『全く同質の別の物質』という点ですね。言い換えると『同じ物の違う物に換える』というちょっと意味の解らない文章になっているように感じました。もしかしたら『鉱石類は別の鉱石類に』という意味かなとは察しましたが、出来ればもっとしっかりと書いて欲しいです。鉱石類は鉱石類に、布は布に、肉は肉に、草木は草木に、みたいな感じですかね。
 ・《等価》とは《誰にとって》の等価か?
『たとえば、銀貨十枚分の価値のある金貨があるとする。とすると、この金貨を《等価交換》することによって、十枚の銀貨をつくり出すことができる。長剣一本分の価値がある斧があれば、それを剣に変えることができる。』
と書かれてありますが、『銀貨十枚分の価値のある金貨』というのは人間が勝手に決めた価値ですよね? それは《世界の法則》とは当てはまらないように感じました。
 ・質量保存の法則等が適用されない?
1『ヘルメス・トリメギストス』にて、錬金術は『現代科学を魔術的概念で解明』したようなものと書かれているのに《等価交換》で『質量保存の法則等が適用されない』とあります。上記は解明する方法が違うだけで求める答えは同じ、というような解釈なのですが、それで『質量保存の法則等が適用されない』というのは少し違う気がします。

某有名コミック『鋼○錬金術師』でも、鋼鉄の義手で剣を造り出すとその分装甲が薄くなるなど、質量保存の法則はちゃんとしています。

もしも、今更設定を変えられないのでしたら、SAOのゲーム内での《錬金術》においては《質量保存の法則はあてはまらない》というふうにしたほうがいいかもです。

■3『始まりの日』
・《フレンジー・ボア》一体につき投擲用ピック八本
いくら消耗品武器だし安いだろう投擲用ピックでも、雑魚敵相手に毎回八本も使っていたら大赤字だと思いますね;
それにレベリング前に買ったということは初期配布金でということですよね?
例えば、初期配布金が1000コルだとして、消耗品で一番安い武器でも100コルぐらいはするんじゃ……。流石に一本10コルは安すぎだと思いますし。初期配布金で買える量は高が知れていると思うんですね。

ドロップ素材アイテムを使用して武器を作る、というのも、第一層のはじまりの街近くで出てきそうなモンスターなどは動植物系ばっかりのイメージですので、それらからのドロップで武器を造り出すというのは《何をどう等価交換すれば武器になるのか》という疑問が湧きました。鉱石なんかを落とすモンスターはまだ出ないでしょうし、出るとしたら骨とか牙や角ですかね。それらを投擲ピックに練成……とかだと読者もああなるほどそうやって錬金していくのかと納得すると思います。


・スロット
初期に二つ、10レベル毎に一つ追加、エクストラとユニークは覚えた段階でそれぞれ一つだけ追加らしいですよー。

■4『キリト』

・錬金術スキルで造る剣が強すぎな感じがしますね。
 アニールブレード練成で二十層を越えても使うことの出来る剣。彼が無料でそれを練成しまりプレイヤーたちに配りまくれば、アインクラッド攻略は即効で達成できそうな力ですね……。

■6『ビーター』
大変に申し訳ないのだけど、あまり感情的に批判はしたくないと常々思ってはいるのですけど、これだけは言わせてほしいです……。
ボスの武器を練成――つまりボスの攻撃手段を奪うというのは、ソードスキルを象徴とするSAOにとって正にチート能力に他ならない! と思いますよ?
剣が象徴の世界ですからね、当然ボスも武器持ちの人型が多いと聞きます。
ボス戦開始早々ヘルメスがボスの武器を無効化――ボスは攻撃手段なくしてオロオロ――攻略組でフルボッコ――という戦法が浮かびました。

■8『竜使いの少女』
・一番最後に脱字。
『《錬金術師》と《竜使い》の少女出会いだった。』
→『《錬金術師》と《竜使い》の少女との出会いだった。』では?



全話を通して総合すると、先述した通りやはり文章の書き方がしっかりしているのでその点については文句なしでした。欲を言えば戦闘描写が今一つ物足りなかったかな、というくらいですね。
錬金術師の兄弟子に教わったということなら西洋剣術ですかね? 戦い方のイメージが曖昧で書けないのか、単純に戦闘描写が苦手なのかで別れてきますが……後者の場合は漫画の戦いを文章に起こしてみると良い練習になると聞きました。
小説における戦闘描写も大きく二種類に分かれるのですが……ちょっと長くなりそうなので割愛しますw

さて、一番気になったのが《錬金術》スキルと主人公の能力?ですね。
・質量保存の法則が成り立たない。
・練成した武器を宙に浮かせて操る。
・第一層時点で既に第二十層の武器をも造れる。
・敵の武器を練成出来る=敵の攻撃手段を奪える。
・迷宮区ボスの武器でさえ奪い練成出来る。
これだけ出来て更にデメリットらしきものが何もない。
それは……チートと呼ばれてもしかたないですね。

そして先述しましたが、《等価交換》の《等価》の基準。
現実的に考えれば、構成元素が同じでそれを魔術的に組み換えることで別の物質を作り出せるが、元々の元素数は決まっているために質量保存の法則は絶対。という感じになるかと思いますが。
この《錬金の勇者》の錬金術はどちらかというとゲーム的な価値を基準としていますよね? 何レベル相当の武器一本を練成すると何レベル相当の武器が何本というように。
あくまでも私個人の考えだと、上記のように現実とSAO内とで錬金術の効果に差異があるほうがいいのではと思います。

現実の錬金術がSAOでも使えるスキル。ということだと、茅場さんが何故普通の人間は存在すらしらない錬金術の詳細な情報まで知っていたのかという疑問も生まれます。あのお爺さんが懇切丁寧に教えてくれそうな人ならともかく。

上記を纏めると、厳しい言い方になりますが《錬金術》スキルの詳細が甘いところがあると思います。
現状では《刀剣練成》しか出ていませんが、錬金術には調べれば調べるほど可能性が多々あると思います。
例えば、草原での敵との戦闘中で、道端に生えている草を《鑑定》して毒草だと見抜き、それと自分の武器とを練成して即席の毒付与とか。
例えば、道に落ちている枝や石などを集めて練成して即席の罠を造るとか。

今のままですと戦い方がワンパターン化していますし、能力の高い武器を造るのは良いのですが、それを扱えるステータスを持っているのか、というのもあります。
レベル制MMOだと何レベル以上じゃなければ装備出来ないとか、スキル制MMOだと何以上の筋力値でなければ装備できないとか。

現状デメリットが出てきてないように思いますので、物凄いバランスブレイカーな感じがしますね。ユニークスキルというものを作ったとはいえ、フィアネス精神を持つ茅場さんがここまでのスキルを許すかどうか……。

文章力がなまじある分、ここらへんの設定の弱さが際立っているように感じました。

おそらく今後、ヘルメスや錬金術の詳細が明らかになるとは思いますが、もし上記をまとめて返答できる物語を考えていらっしゃるのでしたら、出しゃばってしまいすみません。

最後となりますが、上から目線な感想となり申し訳ありませんでした。
ですが、設定の詳細を詰めて、主人公が場面場面で効果的に錬金術を使用して状況を打開していく、という物語になればもっと面白くなりそうだなと思い、苦言を呈させて頂きました。

それでは、長文悪筆失礼致しました。


▼返信
投稿者: トリスメギストス
[2014年 02月 25日 (日) 16時 50分 07秒]

 ご丁寧にありがとうございます。《錬金術》のデメリットに関しては一応考えてあるので、そこはご心配なく。決して最強すぎるスキルではありません。充分強いですが……;

 戦闘描写はイメージが固まっていないのがあるのと、元々文章を書くのがあまり得意ではないのも少し……。
 個人的には、錬金術=科学とぴったり当てはまるわけではなく、多少のずれが存在すると考えています。初期配布金は3000コルだと考えていましたが、少し修正しようかと思っています。
 お金の錬成の所は書き換えます。うまく考えてなかった……。

*追記:自分で1000コルって書いてましたね……ごめんなさい。修正します。

 ゲーム内の《錬金術》は、茅場さんがゲーム内でも現実世界の錬金術を使用できるように、システムに穴をあけた様な感じとなっています。多少は彼に融通が利くように改良されているかもしれませんが……。
 また、ヘルメスは最初《錬金術》を隠すつもりでいましたし、今は攻略組はヘルメスが大嫌いなので「テメェの作った武器なんか使う義理はねぇ!」とか効率無視して言われると思います。基本中層には降りてきませんしね……。

 どこを直せばいいのかわかりやすくてよかったです!今後もいろいろ指摘をしていただけると嬉しいです。感想ありがとうございました!!

*追記(二回目):『相手の武器を奪う』に関しては、「アームスナッチ」などの「スキルがなくてもできること」だと考えています。なお、剣があたりを飛翔することに関しては、後々明らかになってくる能力なので、此処ではただの伏線(?)としました。

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